誰かが言った。春は久光の季節なんだ、と。ほら、「サッカーは最後にドイツが勝つスポーツ」って言葉があるやん、あれと同じやで、と。要はバレーボールというものは、最後に久光が勝つスポーツなんだ、と言いたいらしい(「もちろん、春=スプリングにかけているんやで」)。
確かに。私がVリーグを見始めた頃久光は強かった。レギュラーラウンドを3位で通過して、ファイナル3で2位通過のウチを破って(ちなみに2016年のその試合で私は、それまで決めかねていた推しのチームを東レアローズにした)、そのまま1位通過の日立リヴァーレ(当時)も撃破した。2019年のファイナルも、ウチにゴールデンセットに持ち込まれながらも、「ゴールデンセットにもつれ込むことは想定済み」と言わんばかりにあっさりと勝った。確かに春は久光の季節だった。
さらっと書いたが、「だった」と過去形にせざるを得ないシーズンがここのところ続いた。19/20シーズンは一気に7位に落ち、翌20/21は8位になった。古藤選手、新鍋選手、岩坂選手…とあの頃のメンバーがどんどん抜けていって、こう言っては何だが、見る影もなくなっていった。
ただ、そんな私がびっくりしたのが20/21シーズン後に行われたVCupだった。昔ではありえなかった控えエリアの光景の数々。その直前に見たリーグ戦では見られなかっただけに、いったいこのチームに何が起きたんだ?と思った。そのことは一年前にたくさん書いたんだけど、
ああ、若い選手たちが目立ってきて久光は変わりつつある。そう思った。
21/22シーズンが開幕して、また私もSNSのフォロワーさんが増えていったのだが、そこで気づいたのは、久光ファン率の高さ、だった。これが、私が久光の試合を見に行って写真を投稿していたのなら当然なのだが、私が初めて見たのは11月末のこのはなアリーナでの対戦だったし、ウチとの試合だったので写真も全然撮っていない。にもかかわらずだ。
そこでふと思ったのは、SNSのヘビーユーザーと言ってもいい学生層のファンが久光に増えているのでは、ということだった。ここはウチ(東レです)の独壇場と言ってもよかったのだが、オフシーズンにもインスタライブをやっていたり、要は「吉田マネチルドレン」が一大勢力になっていることに気づいた。いや、チルドレンってそこまで彼女たちと年齢離れてないし!というツッコミが入りそうなので、吉田マネ門下生といったところか。
ツイッターは基本的に自分の興味があることだけをフォローする傾向にあり、それ以外の情報に接する機会が少ないが、インスタは検索マークを押すと、関心のないジャンルの写真も出てきたりする。そこに久光の選手が出ていてそれを見たのが入口だった、というファンがいたのがいい例だろう。
バレーボールの入口はたいていは地上波のテレビだったと思うけど、今はインスタも入口なのだ。いや、既にTikTokが入口になっているかもしれない。つまり、久光はファンも含めて「新しい」のだ。
ファンを含めて、と書いたのは、何よりチームが変革の真っ最中なのだ。詳しくはブログに書いたけれど、チームは久光製薬から分社化してSAGA久光スプリングスになったし、2023年春には練習拠点を神戸から佐賀へ移転する。
久光は選手も、運営も、そしてファンも、まさに変革期なのだ。
ただ。変革と言ってもいきなり過去と決別して一から、というわけではなかった。何よりチームには黄金期とこれからの新時代をつなぎ、歴史を断絶させることなく継続させようとする人がいた。───そう、石井優希選手である。