なぜ「世界最高峰」なのか。大河新チェアマンが明かしたSVリーグという一大改革

Vリーグトーク
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今シーズンより「V.LEAGUE REBORN」の名のもとに生まれ変わるVリーグ。SVリーグ(昨シーズンのV1)とVリーグ(同V2・V3)に名称も組織も完全に分割されたり、売上規模まで細かく定めたライセンスなど、これまで何度も改革改革と叫ばれてきたVリーグですが、今度こそ本気の改革を感じさせます。

その改革を中心となって推進してきたのが、2021年にVリーグのバイスチェアマン、そしてこの2024年7月から晴れてチェアマン(正確にはSVリーグと一般社団法人ジャパンバレーボールリーグの兼務)に就任した大河正明氏。これまで各種インタビュー記事や本人のSNSなどで、その狙いなどは断片的には伝わってきましたが動画などはなく、本人の口から聞ける機会はなかなかありませんでした。

そんな中、先日東京ビッグサイトで開催された「Japan Sports Week | スポーツチーム・アスリート向け総合展」のカンファレンス「スポーツリーグの成長戦略」に、ジャパンラグビー・リーグワンの玉塚代表理事と共に登壇するというので、足を運んできました。その内容を私なりの解釈も含めここでご紹介することで、まだ不透明な今回の「V.LEAGUE REBORN」が少しでも見えてくるのではと思います。

※なお、当日は撮影・録音・録画一切禁止のため、私のメモ書きを元にしていますので、正確性に欠ける部分がある可能性があることを予めご了承ください。

三度目の正直であるV.LEAGUE REBORN

簡単な自己紹介を終えて(ここで話したことは文中でところどころ補足しています)早速この日のために用意したスライドを元に話し始めます。

大河チェアマン
大河チェアマン

SVリーグが生まれることを知っているのは100人中1~2人いるかどうか、だけれど、最近男女共に代表が強い、ということを知っている人は多く、トップリーグを強くしないとその競技が根付かない。

そんな中で、Vリーグは「サッカーに負けるな」「バスケに負けるな」と、過去二回改革を試みてきたと明かします。

まずサッカーに負けるな、は1993年に発足したJリーグに負けじとバレーボールもプロ化するしかない、と1994年に当時のバレーボール協会・松平康隆会長が掲げたもの。ただしこのときはバブルの崩壊もあり企業チームが不況に陥ったことなどから実現できなかったと。

バスケに負けるな、は2016年のBリーグ開幕2日前に発表された「スーパーリーグ構想」。これは2018/19シーズンからのいわゆる新生Vリーグといえばわかる方も多いと思います。しかし結果はご存知の通り、ホームゲームのチーム移管などは実施したものの、大河氏曰く「中途半端に終わった」と。

確かに上記の「スーパーリーグ構想」を読むと独立法人化やユースチームの設置など、SVリーグのライセンスに規定されている項目もあるのですが、その一年後の2017年の記者会見で発表された「Vの構造改革〜 バレーボールのスポーツビジネス化に向けて 〜」を見ると、それらはいつの間にかなくなっていますね。

一般社団法人SVリーグ/一般社団法人ジャパンバレーボールリーグ オフィシャルサイト
SVL/JVLオフィシャルサイトです。試合日程、チーム紹介など。

ではなぜ失敗したのか。大河氏はBリーグとの詳細な比較表を示したうえで、チーム数などはほぼ同じなのに入場者数、そしてリーグとクラブの法人収益で大きな差が出たと解説しました。

このとき大河氏も触れましたが、JもBも、危機感から生まれたんですよね。

大河チェアマン
大河チェアマン

Jリーグは1986年のW杯予選で韓国に敗退して出場できなかったことから、強化のためにプロリーグを作る気風が生まれ、Bリーグは分裂状態(注:NBLとそこから独立したbjリーグ)を解消させないと2020年の東京五輪に出場させない、とFIBAが警告してきたのがそれぞれのきっかけ。

サッカーは今でこそW杯常連国ですが、初出場は1998年。1993年発足のJリーグが貢献したことは言うまでもないでしょうし、バスケも今回48年ぶりに自力でパリでの五輪出場を決めたのも、Bリーグあってのことだと思います。

ただ、大河氏が強調していたのが、サッカーもバスケもW杯という世界の舞台ではまだ強くない(注:それぞれ最高でベスト16、19位)。でも、バレーボールはW杯ではないですが、先日のネーションズリーグで男女ともに2位。世界ランキングでも男子2位、女子は7位と、既に強いという大きなアドバンテージがあること。

だからこそV.LEAGUE REBORN、とおっしゃったかどうかは覚えていませんが、この勢いをV.LEAGUE REBORNという改革につなげる、という意図は間違いないと思います。そしてそのために一番大事なこととして、強調する口調でこんなことを言ってました。

大河チェアマン
大河チェアマン

一番大事なのは経営の軸を作るためのガバナンス(統治)と事業力の強化。戦力はその次。

経営の軸がなかった、そして稼ぐ力をつけることが必要、ということは強調されてました。そして、失敗した理由として挙げていたかはわかりませんが、稼ぐことに消極的なチームも加盟していたことを挙げ、同じ志を持ったクラブにリーグ(SVとV)と法人(一般社団法人SVリーグと一般社団法人ジャパンバレーボールリーグ)を分割したと話してました。

これ、つまりV.LEAGUE REBORNの資料で定義されていたこれ、ですよね。

  • 競技力のみならず、組織力・事業力を含むすべての分野でTop of Topのクラブのみ加盟できる「世界最高峰」のリーグのSVリーグ
  • より地域共生を重視するVリーグ

これは私の解釈ですがリーグもチームも稼ぐ力をつけて、それが回っていくことでバレーボールという競技全体が強化される。それが言いたいんだなと思いました。

これが冒頭部分の講演パート(10分)でした(続きは後述します)。ここまで読んだ方はお金とか経営の話ばかりだなと思ったかもしれません。ではなぜそうなのか。私なりに解説します。