実は東レアローズには、非公式ではありますが、各試合を振り返る「東レアローズ新聞アンビバレント」というものがあります。19/20シーズンから足掛け77号発行されていますが、今回は新聞を作っている私が紙面に込めたネタや思いなどを、シーズンを振り返る形でご紹介します。
といいますのも、ネーションズリーグでアロとも二人と飲んだときに、新聞の見出しとか散りばめているネタに全く気付いていなかったんですね(苦笑)。こりゃいかんな、というのと、「実はこういうことだった」という解説も面白いかなと。それがこの記事を書く理由です(笑)。
そもそも東レアローズ新聞「アンビバレント」とは
まず、この新聞についてご説明します。
・「こういう新聞があったらいいよね」という極めて明確なコンセプト
東レの試合の様子を、ファンの目線でダイジェストで伝える。それが編集方針です。スポーツの新聞といえばスポーツニッポンや日刊スポーツのようなスポーツ紙がありますけれど、専門新聞となるとサッカーのエルゴラッソくらい。私も一時期はサッカーにハマっていたので、よく買ってました(なのでモチーフにしました)が、それで試合の復習、答え合わせができるのが楽しいんですよね。
なおタイトルの「アンビバレント」ですが、これは私が好きな欅坂46(現:櫻坂46)の曲名からとっています。「アンビバレント」とは「二律背反」。相反することが同居している、とでも申しましょうか。嫌いだけど好き、とか。東レは「和気藹々」と「強さ」という、本来相反するものが同居しているチーム、だと思っていたのでそこからつけました。
私が現地で見たリーグ戦、皇后杯は基本的に全て作っています。ファイナルなど大きな試合の前は、試合の展開を予想したプレビュー版を作ることもあります。過去号は全て「#東レアローズ新聞アンビバレント」で見られるので宜しければご覧ください。
・制作時間5時間の完全内製
紙面は一面と、試合全体のレビュー、各選手のレビュー、コラムによる中面から構成されています。各選手レビューは、VOMとか関係なく一番よかったと思った選手を一番上にして、字数も多くして厚く取り上げます。コラムは試合で感じたことを一枚の写真を通して語る「Finder」と、試合とは関係のない会場の様子などを伝える「Outside Writer」の二種類あります。
新聞の編集作業は全て私で、写真も文章も、全て私によるものです。一回の制作にかかるのはざっと5時間ですかね。原稿作成も大変ですが、一試合一万枚はある膨大な写真の中から紙面に使う写真を選び出すのが本当に大変で。なので、土日で試合を見て土曜の試合を月曜、日曜の試合を火曜に出せればいい方、というスケジュールです。あまり間が開くと鮮度が失われますから少しでも早く出したい気持ちはあるのですが。
当然仕事の合間を縫って作っていますが、どっちが本当の仕事なんだかと思うことはあります(新聞は一銭にもなりませんから 笑)。
なお、新聞はあくまで試合の翌日に発行された、という体にしています。なので発行日付も翌日になっています。また、シーズン開幕前には雑誌風にした特大号も作成しています。
・アロじょとアロともの背中を押す
当然ですが、選手批判はしません。調子がよくないときも「ここは反省」という指摘はしますが、「ここが踏ん張り時」とか、背中を押すように心がけています。負け試合でも「負けたけれどここは次につながる」みたいな好材料を探して伝えるようにしています。
なので勝った試合より負けた試合の方が紙面制作で頭を使います。また、アロともの方にとっても「そうそう」と共感していただけるよう、アロともの方々との乖離が起きないようにしています。なのでアロともの方々のSNSはけっこう見てますし、参考にさせていただくこともあります。
ちなみに選手が見ているかどうかはわかりません。いいねなどの反応は一切ないですからね。
・編集視点だからこそ、より必要な試合への集中力
新聞を作っていてよかったと思うことは一つだけあります。それは編集者として、つまり「新聞を作る」というフィルターを通して試合を見るようになったことです。「あ、このシーンがいいからこれを一面にしてみようかな。そのためには写真を縦の構図にした方がいいかな」とか「ここはこの試合の見どころになりそうだな」とか「今日の試合のカギはこの選手になりそうだな。名前にひっかけて見出しはこうしようかな」とか、考えながら試合を見るのはとても楽しいです。
また当然、新聞としての体裁がありますから文章もしっかりしている必要があります。だから試合をちゃんと見なければならないし、目の前で起きている小さなことにも気づかないといけない。集中力は間違いなく高まりました。私は漫然と試合を見るのが大嫌いで、それを防ぐために何らかのフィルターなり制約をつけるのが好きなのですが、この新聞の編集作業というのはうってつけなんですよね。
ただ、写真はそこそこ撮れるようになりましたけれど、私はバレーボールの経験もないですから、記事自体はどうしても薄っぺらくなります。あのシーンで○○選手のポジショニングがこうだったから、とか、S2ローテにしたことで~とか、そこまでは書けません。実際、競技経験もない奴がこんな薄っぺらい、つまらない記事ばかりの新聞作りやがって、というご意見をいただいたこともあります。
ごもっともではありますが、でもそういう専門的な記事を読みたかったらそういう媒体を探していただければいいですし、何より「詳しいことはわからないけれど、現地ではこう感じた」ということって大事だと思うわけです。中継を見るならまだしも、結果とか数字だけ見て論評するより、現地で見て感じたことの方が重みがあると私は思います。
というのと、これから書く今シーズンの各号の振り返りでお気づきになると思いますが、所詮自己満足で作っている新聞なので。毎回楽しみにしている方もいるようなので、それが励みです。
ただ。こういうのってまずやってみることが必要だと思うんですよね。バレーボールの魅力を発信する仕事をしてみたいけれど文才がないし、競技経験もないし…と思っていたらいつまでたっても作れません。まずやってみること。過程を通して成長していけばいいんです。
・紙面はパワーポイント
ツールはパワーポイントです。あと背景の色はこの試合で着用したユニフォームに合わせています。あと、現地で感じたことでもこれは戦術を明かすことになるから、とあえて触れないこともあります。例え読まれていない紙面でも、一応情報戦の一翼は担っている可能性もあることは意識しています。
広告も入ってますがTORAYではなくTODAYですし、コピーも本家の「Innovation by Chemistry」「素材には、社会を変える力がある」 に対して「Renovation by Chemistry」「素材には、社会を変える愛がある」ですからね。そして「愛がある」に引っかけて、写真は必ずその試合の黒後愛選手の写真にしています。芸が細かいんです(笑)。
ちなみにこの黒後選手を使った疑似広告ですが、不在だった昨シーズンもずっと使ってました。それは、「戻って来いよ」「いつでも待っているぞ」というメッセージを込めていたんです。
前置きが長くなりましたが、それでは試合順に紙面を通して22/23シーズンを振り返ります。なお、私は元々東レだけでなく幅広く見るタイプなので、全試合に帯同(笑)しているわけではなく、新聞のない試合もあります。ただ、行った試合は全て作りました。