18/19東レアローズ執風記~レギュラーラウンド編~

東レアローズ滋賀
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

2018/11/24 対NECレッドロケッツ ○3-2 大田区総合体育館 勝利の円陣:大野選手

この日は元々旅行に行く予定だったのだが、都合により行けなくなりそれで…ということで急遽行った試合だった。そう、この頃の僕における東レアローズの優先順位はそこまで高くなかった。

席に座ると僕の後ろの応援団席からひときわ大きい声が聞こえてきた。

「今日僕たちは音響が使えません!」

そうか。今季から新生Vリーグとなってホームゲームの運営が各チームに移管され、対戦相手が音響が使えなくなる、というケースをチラチラ聞いていたけれど、これがそうなのか…と。

真っ赤に染まるアリーナ、しかも応援団席は狭い一角に追いやられて音響すら使えない…だったらやってやろう!自然と僕の気持ちも熱くなった。といってもこのときの僕にできることは写真を撮ることだけだったけれど。

ただ、「音響が使えないのなら声出して応援するしかないやん!」と応援団の気迫が選手たちも後押ししていった気がした。たぶんだけれどこの試合が東レの応援団にとって初の音響利用不可試合だったはずだ。

試合は一セットずつを取り合うというまさに接戦でフルセットにもつれ込み、3-2で勝利を収めることができた。NECとはレギュラーラウンド二試合とファイナル8の、計三試合戦うことになるんだけれど、全てフルセットになった。

あとこのときからだろうか。試合後の勝利の円陣で誰かが真ん中に放り込まれるという儀式に気づいたのは。この日は黒後選手が大野選手を押し込んでいた。新たなシャッターポイントをまた一つ見つけた。

2018/12/1 対デンソーエアリービーズ ●0-3 ウカルちゃんアリーナ

僕にとって待ちに待ったホームゲーム。もちろん日程が発表されたらすぐに滋賀大会をチェックし、チケットも発売と同時に押さえた(ガチになりたくないのでアリーナ指定だったけれど)。2年ぶりとなるウカルちゃんアリーナだったけれど、偶然にも会場には同じく2年ぶりの登場となる木村沙織さんがイベントのゲストで駆けつけていた。

ちなみにそこにはコーチとして迫田さおりさんもいた。これが木村沙織さん最後のホームゲームだと気づき2年前に訪れたこの地で、この二人が会場に居合わせたのは僕にとって2年前の東レアローズと僕自身がリンクした空間だった。歴史は断絶するものではなく継承し継続されてこそ生きてくる。それがチームのDNAになる。そう、「風の谷の東レアローズ」という名をつけたよう僕が魅了された東レアローズを取り巻く空気は、2年たっても健在だった。

しかもこの日は一試合で13時試合開始なのに開場は10時。少し遅れて会場入りすると、選手たちがリラックスした様子でウォーミングアップをしていた。普段の東レアリーナでの練習風景を彷彿とさせ、選手たちがより身近に感じた。

もっとも試合はデンソー相手にぐぅの音も出ないくらいの完敗だった。第三セットが35-37とものすごい戦いになったけれど、デンソーは一セットすら取らせようとしない見事な戦いぶりだった。脆いときは脆い。刈谷で感じた、勢いがつくと止まらない、という強さのいわば負の側面といおうか。ああ、これが今季の東レアローズなんだろうな。

試合後。僕は初めて出待ちをした。推しの選手が自分の写真をアイコンに使ってくれたのでその御礼が言いたかったのだ。にしても自分の写真がアイコンに使われるなんて…写真を撮ることの意義が新たに加わった、そんな思いだった。

そして試合後、僕は初めて東レアリーナに行ってみた。風の谷の空気を吸ってみたかったからだ。滋賀事業場の中にあるその建物は、事業場の中の一施設としてたたずんでいた。特別な場所というよりは、あくまで事業場の一施設に過ぎなかった。そのたたずまいは、東レアローズをより身近なものに感じさせてくれた。