18/19東レアローズ粘風記~ファイナルステージ編~

東レアローズ滋賀
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

②「シーン」の多さ

東レは撮っていて本当に楽しいチームだった。僕は16/17シーズンから撮り始めたんだけれど、そのときは木村沙織さんばかり撮っていた。逆に言えばそれ以外の被写体はあまりなかった。いや、木村沙織さんを撮ることに夢中になっていた部分はあるんだけれど、控えエリアはNECなんかに比べればそれほど盛り上がってなかった。

今季の東レは、白井選手とか日高選手のいた控えエリアも楽しそうに盛り上がっていたし、なにしろ堀川選手が大声出して鼓舞していた。撮りたいと思うところがたくさんあった。

撮りたいと思うところがたくさんあったということは、それだけ見に来た人にもいいなと思うシーンがたくさんあったのでは、ということだ。そして何より、ファイナル8からファイナルに勝ち上がっていったように、チーム状態がよくなっていったことも大きい。つまりそれだけ選手たちの表情もよくなっていったと言うことだ。

人を惹きつける本当の意味での魅力が多かったのがよかったのではと思う。

③一員意識

元々僕にとってVリーグは見るもの・撮るもの、だった。写真を撮ることでリーグやチームの魅力を伝え、それで少しでも多くのファンを増やすことが僕のとっての応援、だと思っていた。

ところがだんだん東レアローズへの愛が深まってくると、撮っているだけでいいのか、ちゃんと声出して応援すべきなんじゃないかという思いが芽生えるようになった。そんなときに、それまで避けていたベンチ裏シートに座るようになって、そこは本当にベンチの裏なので間近で選手を応援できる席と気づいて、そこから声を出しつつ撮るということを僕なりにうまく両立できた気がする。あー。言われてみればベンチ裏シートであんなに声出して撮っていた人は僕ぐらいだったと思う(もちろんベンチ裏シートは静かに見るものだという人もいるだろう)。

声を出して応援するようになると、どこかファンではなくチームの一員となって一緒に戦っている感覚になった。つまりそれは、よりチームと密着に関われると言うこと。ある意味感情も選手たちとより共有することになる。その(一方的な)参加感が楽しかったのは間違いない。

あと、試合を通して実際に会う知り合いも増えていった。開幕時は一人で見ていた試合が、気づけば会場に着けば多くの人たちと会話を交わすようになっていた。それは結果的にファンの一員という意識になれたのだと思う。

でも一番大事だったのは…

④発見の連続

そもそも僕は1年半ぶりにVリーグ、そして東レを見ることになって、誰を追いかけるかを全く決めていなかった。木村沙織さんはいなくなっていたし、唯一興味のあった中川有美選手は退団していた。もちろん黒後選手は知っていたけれど。で、たまたま見た開幕前の特番で小川選手を見つけたのが大きかったんだけれど、そこから白井選手や日高選手を知り、黒後選手の魅力を知り…と、どんどんいろんな選手だったりスタッフだったり、面白いシーンを見つけていけたのが大きかった。

例えば試合前にやる小川選手と黒後選手のルーティーンもそうだし、後でその直後に白井選手と黒後選手のシバキ合いがあることにも気づいた。試合後の円陣もそうだ。「いいな」と思うシーンにどんどん出会っていけたのは大きかった。だから試合に行くのが楽しみになっていったんだろう。新たに見つけたシーンや選手を見たい、撮りたい、というモチベーションと、次はどんな発見があるのだろうというモチベーション。

もちろん、これはいわばビギナーズラックというか、ハマリ始めたからこそ得られるモチベーションだったと思う。長年チームを追い続けると発見は減っていくし、どうしても「このシーン前も見た」になって新鮮味が薄れていくと思う。僕自身サッカーとか、一時期ほどのモチベーションがなくなっている興味対象はいくつもある。

でも、熱量は減ってもそれを嫌いになることはないし。そういう意味では根付いているのだと思う。熱しやすく冷めやすい、よりはこれくらいじわじわと熱を持ち続けていた方が僕はいいと思う。

僕ももしかしたら数年たっても「一番楽しかったのは18/19シーズンだった」と思うのかもしれない。でも、そうなるかなと思いつつだったらとことんのめり込んでやろうと腹をくくったのも事実だったし、今季の東レは追いかけないと損だと思っていた。

19/20シーズン、僕はどんな風にVリーグを追いかけるのかまだわからない。今はとりあえずオフにして、一旦頭の中を空にしようとしている。だけれど、「今季の東レはもっと面白い!」そんなシーズンになって欲しいし、もちろん最後はリーグ王者のタイトルを獲って欲しい。

黒鷲旗の優勝シーンを見て、改めてタイトルっていいなと思った。タイトルを獲ると言うことは、つまり負けることなくいい表情だけを見られる、と言うことなのだ。