18/19東レアローズ粘風記~ファイナルステージ編~

東レアローズ滋賀
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

2019/3/17 対デンソーエアリービーズ ○3-1 深谷ビッグタートル 勝利の円陣:黒後選手

前日NEC相手に3-0で完勝する姿を目の当たりにしていただけに、厳しい試合になるだろうなと思っていた。間違いなくデンソーの状態はよかった。今シーズンのデンソーとの試合は0-3、3-0といずれもストレートと非常にわかりやすい展開。さあ、どうなるのか。

試合は第一セットを22-25と落としてしまう。ああ、やっぱりデンソーは強いよな…

ところが、第二セットを25-19で取ると、続いて二セットを連取して3-1であっさり勝ってしまった。あ、あれぇ…おかしいなあ…見事なまでに流れが変わった。

それがなぜなのか、まで分析できると楽しいのだが、あいにく僕に言えることは、東レのデータ分析が進んでいるから、としか思えなかった。東レはいつもセット毎にアナリストが紙のデータを菅野監督に渡している(このシーンは他のチームでは見られない。まあパソコンとかでやっているのだろうが)。そこからいろんなものが動き出す。そんな印象を受ける。データが届いて菅野監督がそれを読み砕いて、サッと戦略を立ててそれがスタッフ全員に共有されて、それを遂行する…

当たり前のように見えることなんだけれど、これがきちんと機能しているチームは意外と少ないのかもしれない(言うまでもなく久光はできている)。いつの間にか僕はチームアナリストにまで興味を持つようになっていた。

選手からすれば、それなりに指導者歴もある菅野監督からの指示ってものすごく説得力があるのではないだろうか。これほど頼りになる監督もいないだろう。いや、監督ではなく指揮官と言った方がこの場合適切なのかもしれない。

気づけば僕の撮影範囲はさらに広がっていた。

彼らもチームの一員なのだ。当たり前のことだけれど、改めてそこに気づいた。

デンソーに勝利したことで、久光を除くファイナル3進出争いは東レを含む4チームに絞られた。全く考えていなかったファイナル3が現実に迫っていた。東レはトヨタ車体、JTというレギュラーラウンド上位チームとの対戦を残していたわけだけれど、逆に言えば直接対決を最後に残していたことも運が味方していた。

2019/3/23 対トヨタ車体クインシーズ ○3-1 ゼビオアリーナ仙台 勝利の円陣:小川選手

この時点でポイントはJT14、トヨタ車体13、東レ11、NEC10。この日、東レはトヨタ車体に勝ち、かつJTとの結果次第でファイナル3に進出できる可能性がある状況だった。僕にとっては今シーズン最後の地と思っていた仙台は、まさかまさかのファイナル3のかかる大一番と化していた。

ここからファイナル3までについては一度書いているのでそちらを。

東レ対トヨタ車体の試合前にNECが敗退したことで、この試合の勝者がファイナル3に進むというまさに大一番になったこの試合(ただし東レはフルでは翌日に持ち越し)。そう気づいて僕の気持ちも一気にヒートアップした。今までは大声出して選手を鼓舞するなんてしてなかったのに、大一番に臨む選手たちを目の当たりにしていてはもうそれは関係がなかった。ローテーションでベンチからコートに走っていくときには「エリナ行けえぇぇぇ!」と普通に叫んでいた。ましてや推しの選手は呼び捨てなんか無理と思っていたけれどもはや関係なかった。

トヨタ車体を3-1で下してファイナル3進出を決めた瞬間。僕はトヨタ車体側のコートだったんだけれど、3-1になったことで、その瞬間を目の前で見られるという幸運に恵まれた。そしてその瞬間の選手たちは、今シーズンの歓喜のシーンのどれよりも、喜びにあふれているものだった。

しかもこの試合、円陣の真ん中に放り込まれたのは推しの選手だった。確かに試合途中で投入されて、サービスエースを取るなど活躍はしていたが、まさか円陣に放り込まれるとは…

会場に足を運ぶファンは誰だって、チームの勝利を願っている。そしてかつ、歓喜を目にし、共にしたいと思っている。しかも自分の好きな選手が大活躍すればなおさらだ。

でもそんな試合はなかなかない。ないけど、いつかあるから追い続ける。追い続けるし、撮り続ける。

カメラ片手に追いかけるカメオタの胸中がやっとわかった。