「ポジション・日高萌」

東レアローズ滋賀
all text and photographed by
Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

もちろん、仲間であると同時にライバルでもある。特に日高選手はセッターで言えばこう言っちゃ何だけれど関選手、白井選手の次の立場だ。リーグ戦でセッターとして起用されていた試合を私は思いつかない。3月10日の埼玉上尾戦のように、試合によってはベンチ外だったこともあった。

正セッターになりたい、という思いは絶対にあるだろう。正直に言うと日高選手は大卒で入っているから、高卒の選手に比べ選手生命としてはそれほど長くはないのだ。

でも、思いはあるけれど、実力差で試合で正セッターとして起用されない、となればそのときはそのときで、自分がチームに対してできることを精一杯やる。しかもそれは何もピンチサーバーとして試合に出るときだけでなく、控えエリアにいたらコート上の選手たちを精一杯応援する。時には励ます。日高選手からはそんな印象を受ける。決して「私は控えでいいや」ではない。友達仲間ではなく、ライバルとしての仲間。これは何も日高選手に限らず東レアローズに流れている空気だと思う。サークルではなく、(あくまで)チーム。

個人的に印象的だったのは、4月13日のグランドファイナル。この日、日高選手はリベロ登録だった。東レはいつもは中島選手のみ、そしてファイナル8の久光戦からは水杉選手と二人でリベロは併用していたのだが、この試合では中島選手をリリーフレシーバーとして起用する意図もあって(実際、黒後選手と交代するシーンもあった)、中島選手はリベロ登録されなかった。

日高選手がリベロ登録されたのは、今季全試合見ているわけではないから正確ではないけれど、ほぼ間違いなく、今季初だったはずだ。当然本職ではないから、この試合は水杉選手だけで行くということだ。もし万が一水杉選手が負傷した場合の備えとして、リベロ登録したのではないだろうか。つまり、リベロとしての試合出場の可能性は0.01%くらいだったことになる。

で、リベロ登録ということは、ピンチサーバーとしての出場もないということだ。つまり、日高選手がグランドファイナルのコートに立てる可能性をなくす起用、だったわけだ。本人にとって悔しかったのかどうかはわからないけれど、でも、ユニフォームを着て試合に臨める、ということが何より本人とっては大きなことだったのではないだろうか。

レギュラーではないけれど、チームとして必要とされる存在。

それがセッターでもリベロでもアウトサイドヒッターでもない、「日高萌選手というポジション」ではないだろうか。

冒頭の質問は私の質問箱に寄せられたものなんだけれど、少し考えてこう書いた。

「日高萌さんみたいにスターティングメンバーではなくても、ピンチサーバーでもあり、セッターもリベロもできて、他の選手を鼓舞できる選手ですかね。」