「ポジション・日高萌」

東レアローズ滋賀
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

そして、試合前練習を見ていても、当然日高選手はレギュラーではないし、東レのセッター二番手は白井選手なので、セッターとしてトスを上げる機会はほとんど見ることはない。だけれども選手として登録されて、ユニフォームを着ているからにはチームのためにやることをきちんとやろう。練習でコーチにボールを渡すシーンを見ていてそんな印象を受ける。

あと、これはホームゲームとか、練習風景を公開しているとき、最初のウォーミングアップで選手たちが次々とスパイクを打つ、というものがあるんだけれど、そこでボールを出すのも日高選手の仕事で、「はい」「はい」と言いながら丁寧に、かつ素早くあげているシーンも個人的にはツボだ。

練習、といえば、試合前練習で公式練習に入る直前の、関選手、白井選手とのセッター三人での簡単なトス回しも好きだ。どこかキャッキャッという声が聞こえてきそうな光景で、東レアローズの雰囲気を象徴する光景の一つだと思う。セッター三人の絆も伝わってくる(この話は後に出てくる)。

試合中もほとんど控えエリアにいるけれど、そこでも選手を鼓舞したり、盛り上げようとしている光景が好きだ。簡単に言えばムードメーカー、なのだろう。

あと、たまに小川選手に気合いを注入すべく背中を叩くシーンもある。個人的に好きなシーンだ。よくよく考えればこの二人は年齢こそ離れているけど、同期なのだ。

そんな、日高選手により惹かれるようになったきっかけが、2月17日の愛媛でのPFU戦だった。このときのことはここに詳しく書いているんだけれど、

0-2と今季勝利なしのPFUにリードされてから3セット連取してひっくり返したのだが、試合後関選手が突然号泣し出すシーンがあった。このとき、すぐに関選手をフォローしていたのが日高選手だった。

そしてそれからほぼ一ヶ月後。ファイナル3を突破してファイナル進出を決めたときも、日高選手は関選手を褒め称えていた。

さらにさらに。黒鷲旗の決勝では、試合後に代表選出の関選手の代わりにレギュラーだった白井選手を讃えるという、全く同じ光景を目の当たりにした。

真っ先に仲間を讃える。これが日高萌という選手であり、人間なんだなあと思う。