東レアローズに見る音響と応援

東レアローズ滋賀
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

■応援とは、「タイミング」である

東レアローズは、特に連続得点時に「ワッショイ」を流します。ただ、連続得点ではなくてもこれを流すことがあります。正確に言うと、東レがテクニカルタイムアウトで音楽を流せるときの8ポイント目、です。

まあまずはこれをご覧下さい。

「ワッショイ」からのこの「Little Bitch」の流れが完璧なんです。曲と曲の間の「間」がほとんどない、というより一部被せています。これ、例えるならFMラジオ、です。曲と曲とつなぎや、DJの曲紹介からの曲の入りが絶妙なときとかあるじゃないですか。あれですあれです。このタイミングが絶妙だと、気持ちが乗るんですよね(そういう意味ではこの「テクニカルタイムアウトです」の声がDJみたいなものかも 笑)。

これ、もしいつもの得点時の「○○!○○!もう一本!」だと、このとき音楽は流れていないので、いったん音が途切れるわけです。ところが「ワッショイ」は「ワッショイワッショイ」のときも音が流れているので、つまり音が流れたまま「Little Bitch」につながるわけです。もっとも、「Little Bitch」を流すタイミングも、ちゃんと間ができないよう、絶妙のタイミングにしているのでこの流れになるわけです。

いわば職人芸、なんですよ。

私は一度この話を応援団の方にしたことがありますが、「そこまで見てくださっているなんて!」と喜ばれたので、つまり音のつなぎを意識しているということです。

得点を決めた、選手は「よっしゃ」と思う。「ワッショイワッショイ」と観客が盛り上がる声がアリーナに響き渡る中、テクニカルタイムアウト突入で気持ちよくベンチに戻る。そこに「Little Bitch」がすかさず入る。

選手の気持ちが乗るんですよ。

いや、別に東レアローズを絶賛しているわけではないです。他の応援団だって、曲を流すタイミングはけっこう意識していると思います(個人的には3月の深谷でのチャレンジステージ、対PFU戦でのKUROBEも絶妙でした)。

何が言いたいかというと、音響による応援とは決して曲を流すだけ、ではないということです。

あと、東レアローズにおける曲のタイミング、という点でもう一つ注目していただきたいのはこれです。

私は東レの入場シーンが大好きです。選手たちが全力で走ってくるのは久光やトヨタ車体でも見られる光景ですが、選手登場時の音楽(ロングバージョン)を流すのは東レだけです。最初は通常の登場時の音楽でしたが、17/18シーズンからかと思いますが、ロングバージョンを用意するようになりました(先ほどの「Little Bitch」のショートバージョンといい、東レアローズの応援団は音を自在に加工できる人がいるようです)。

その様子を動画で撮ったのがこれ、です。

で、このとき、当然応援団の音響担当の方も、選手が入ってくるタイミングを見逃さないようにじっとコートを見ています。で、私も入場シーンは絶好のシャッターポイントなので、見逃すまいと息を潜めてカメラを構えています。おそらくですが、このときのゼビオアリーナ仙台で、そこに全神経を集中させていたのは音響の方と私だけだったと思います(笑)。

これ、実は音を鳴らすタイミングもちゃんと意識しているそうです。それは何か、をここで語るのは野暮なので言いませんが、その話を伺ってからは私もより「入場シーンでいい写真を撮ろう」と心してカメラを構えるようになりました。

もう一度言います。

音響による応援とは決して曲を流すだけ、ではないということです。

と長々語りましたが、応援団、そして音楽の存在もVリーグにとって欠かせない存在だと言うことがおわかりいただけたのではと思います。昨シーズンから多く見られるようになったアリーナのDJが主導する応援、も否定はしませんが、応援団の方々が長年ノウハウを積み重ねて成熟させた音響と応援、という部分ももっと見て欲しい!と思います。