東レアローズに見る音響と応援

東レアローズ滋賀
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

ただ一方で、地元の高校生が多い、ということはつまり、一日、ないしは二日限りの即席応援団になることが多い、ということです。当然、応援歌なんか知りません。初めて東レアローズの試合を見に来た人たちにもわかりやすい、すぐに対応できる応援手法が求められるわけです。

その点では、東レアローズは今シーズンから応援にスティックバルーンを導入したようですが、あれは初めて東レアローズの試合、もっと言えばバレーボールの試合を見に来た人には、気軽に応援に参加できるツールとなるわけです。しかも、持ち帰ることもできる。応援の思い出になる「ツール」を提供しているわけですね。

さらにいうと、若い人たちが多い即席応援団になるということは、応援団員に親しみを持ってもらう工夫も必要なわけです。

私は東レアローズの団席の近くで試合を見ることも多々あったのですが、応援団長の最初の挨拶が「今日僕たちは音響が使えません」(11月の大田でのNEC戦)とか「こんな広い会場で、僕たちのスペースはこれしかありません」(1月のジップアリーナでの岡山戦)とか、けっこう笑いを取るんですよね。「僕たち」と言っているのもツボで。で、後々団席の年齢構成を見て気づいたのですが…

極端に言うと応援団長が「歌のお兄さん」的な存在なんですよね。高校生とか子供達が多いから、そういう人たちに親しみを持ってもらって、気持ちよく応援してもらう。何よりここに心を砕いている印象です。

私は黒鷲旗の決勝で、一般開放していたので団席に座ったことがありますが(当然ながら他のチームでも座ったことがないので初めて見る世界でした)、客席の人たちにものすごく丁寧に呼びかけていたのが印象的でした。合間にはスティックバルーンが破れてしまった人がいないか、予備を持って歩いていたり。

で、「Little Bitch」の話に戻りますが、この曲はとにかくノリがいいんですよね。初めて東レの団席に座ってスティックバルーンを持ったときに楽しく遊べる曲、としてはぴったりなんです。見てください、これ。

スティックバルーンで簡単な振りさえ覚えればいいわけで、しかもそれが対岸から見るとこんな壮観な光景になるわけです。客席を楽しませているから、こんな光景になる。これ、選手たちを後押しする、立派な応援です。あと、好きなチームのホームゲームは絶対に見た方がいい、というのもこのとき改めて気づかされた光景でした。

私が東レアローズの応援の曲の特徴を「青春」と書いたのは、こういう歓声も含めた音響を若さ、だったり春高のイメージだったり、そして何より東レアローズのカラーが青だから、という意味を込めています。深すぎるぞ。

■応援とは、「日常をもたらすもの」である

これは東レアローズのファイナルでのことです。ファイナルは、入場方法だったり、テクニカルタイムアウトだったり、に、いつものリーグ戦とは違う演出が導入されていました。テクニカルタイムアウトは例えば「太鼓の達人」みたいな絵で手拍子を呼びかけたり、運営側主導による演出が行われました。その分、応援団の介在できる機会は減っていたわけです。ファイナルは選手だけでなく応援団にとっても晴れ舞台、ではあるのですが、ファイナルは両チームのファン以外も多く来ていますし、会場の一体感を生み出すためにはしかたないと個人的には思います。

ところが二戦目となったグランドファイナル。8セットおよび16セット目のテクニカルタイムアウトは会場主導だけれど、30秒のテクニカルタイムアウトは応援団に主導権があると初戦の愛知で気づいた東レアローズの応援団は、一週間の間に「Little Bitch」の30秒バージョンを作ったんですね。つまりそのときだけ「いつもの」東レアローズの試合になったわけです。

ファイナルという特別の舞台。一戦目の東レアローズは、どこかふわふわした感じで試合に臨んでいた印象でした。非日常の空間に飲み込まれていた印象でした。それが、いつのも試合で使われる「Little Bitch」が流れることで、日常に戻れるんですよね。例えて言うなら、長い海外旅行の最中に飲む味噌汁、といったところでしょうか。いつもの曲を聞くことでホッとできる。

こういう後押しも立派な応援だと私は思います。