サマーリーグで見えた東レアローズの未来

東レアローズ滋賀
all text and photographed by
Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

まず新戦力についてですが、吉野優理選手は一言で言えば「巧」でしょうか。ベテランの技(といってもまだ23歳ですが)というか、要はパワー一辺倒ではなくうまくかわしたり、ということがとてもよくできるなと。唸らされることが多かったです。元々ケガをする前は日本代表でしたしね。

そして戸部真由香選手ですが、かつて一緒にやっていたのかと思うほど(そんなことはないはず)、真鍋くるみ選手とのコンビネーションは抜群でした。特に初日は彼女だけ合っていたと言っても過言ではないくらい。それだけ順応性の高い選手なのかもしれません。

次にポジション別に言うと、まずセッターの真鍋選手は初日こそ苦しんだものの二日目からはきちんと修正していた印象です。初日は何も彼女のトスが悪かったわけではなく、チーム自体がチグハグだったなと。初日は練習試合などではなく久しぶりの実戦、ということが大きかったのではと思います。

ミドルブロッカーについては、基本は大﨑琴未選手、樫村まどか選手が軸になるのではと。大﨑選手は貫録が漂っていて頼もしかったですし、樫村選手は昨シーズンの愛媛大会でミドルブロッカーとしての出場もありましたがあれは大﨑選手不在、井上選手負傷で急遽巡ってきたもの。今シーズンは満を持してのデビューと言えると思います。東レの壁として君臨してくれたら…と思っています。

アウトサイドヒッターについては、深澤つぐみ選手が柱になっていくのかなと。昨シーズンはジョーカーとして活躍しましたけれど、なにせ春高を制した選手ですからね。一気に開花しそうだなと思います。また、新人の谷島里咲選手は何より雰囲気を変える存在になりそうだなと。

リベロに関しては言うことはないでしょう。ただ、中島未来選手しかおらず、現時点では補強の話も出ていないので、もしかしたら既に内定選手のアテがあるのかもしれません。実は18/19シーズンも最初は中島選手だけで、年明けに水杉玲奈選手が内定加入ということがあったのでそれと同じかも。

そんな中で、何より東レの未来を左右すると思った選手二人についてお話しします。

まずは古川愛梨選手。私自身は高校バレーまでは追いかけていないので詳細は存じ上げてなかったのですが、何よりセッターにAパスが返るたびに「ライト!ライト!」と常に呼び掛けていたのが印象に残りました。ひたむきさと言いますか。あとジャンプサーブもよかったですね。まだ線の細さがありすぐにレギュラー、とはならないと思いますが、東レの育成メソッドで数年後のエースとして育ってほしいなあと思います。

そしてもう一人は、というより今シーズンのキーマンだと思っているのが西川吉野選手。一言でいえば「殻を破れるかどうか」が全てだと思います。というのも、特に初日を見ていて負のループに陥りやすい印象を受けました。ミスが続くとネガティブ志向になってしまって抜け出せなくなる…簡単に言うとそういうことでしょうか。

そこに切り抜けられたら一気に殻を破れて大きくなれる…そんな印象です。これは選手…というより人なら誰しもぶつかる壁だと思うんですよね。かつての推しの選手もそうでしたし。見ていてちょっと真面目過ぎるかなと思うので、そこは天然みあふれるお姉さんを見習ってほしいな…と(笑)。

そしてこれは何よりチームの根本的な課題だなと思ったのが、チームに「太陽」がいないことなんですよね。今まではチームとして負のループに陥ったとき、あるいは陥りそうな時にそれを食い止められる白井さんや堀川さん、選手だと野呂加南子選手とか、ド天然(でも本人は否定 笑)の小川愛里奈選手とかがいたんですけれど、今のチームは要は「カラッ」とさせてくれる存在、つまりムードメーカーがいないな…と。

それにうってつけの、しかも手薄なリベロの選手が移籍希望になっていたのでひそかに期待していたのですが、別のチームに行ってしまったので(もっとも彼女一人にそれを担わせるのは酷だなとも思いましたが)。このムードメーカーを担う選手が今のメンバーの中から出てきてくれたら…とは思いました。まあ勝っていれば自然とムードはよくなるのですが、負のループに陥ったときのストッパーが必要、ということです。

ということでこのチームの未来について思うところを述べましたが、思うところ、という点ではやはり昨シーズン終了後の退団に触れないわけにはいきません。