①より細かいニーズに対応するため
例えば今までなら、小さな子供のいる家族4人で野球を見に行こうと思ったら、内外野の席を横に一列で4席か、前後二列で買うしかなかったわけです。でもそうなるとすぐ周りに他のお客さんもいるので、子供がはしゃぐと周りに迷惑をかける可能性もあるわけで、となると行く気が失せる可能性もあります。
でも、家族4人が一つのテーブルを囲めたり、スタンド後方の席だったら周りに気兼ねなく楽しめたりします。つまり、席の細分化は取り逃していた層をつかむため、という側面もあります。
②付加価値を高めることでの単価増
「家族4人で気兼ねなく楽しむためなら、多少高くてもいいから専用シートで」と思うのは必然の流れです。バレーボールで言えば、同じスーパーシートでも、よりネットに近い席で見られるならもっと出してもいい。そういうことです。
③空席を埋めるため
例えば埼玉西武の例で言うと、ビジター側というのは基本的にあまり売れないわけです。であれば売れない席を、細かいニーズに対応した席にしてしまう。それがビジター側の最上段に設置した「キリン一番搾りパノラマウッド4」です。4席ごとのグループシートですし、最上段なので周りに気兼ねせずに騒げます。千葉ロッテで言えば、同じくビジター側の外野席上段に「セブン-イレブン スタンドデッキ」という、グループで楽しめるシートを用意しています。
④ネーミングライツによる収入増
企画シートにネーミングライツを付与することで広告収入も得られます。上記に挙げた企画シートにもたいてい企業名がついています。また埼玉西武では、バックネット裏の特等席は「アメリカン・エキスプレス プレミアム シート」と、いかにも高級感が漂う名前です(笑)。企業のイメージアップにもつながりますよね。
⑤ニュース性
例えば広島カープがマツダスタジアムに設置している、寝そべって見られる「寝ソベリア」は話題になりました。また、横浜DeNAだとポールやネットで一部見えにくい席を「わけありシート」として売っています。逆に言えばそれ以外の席は視界が保証されていると言えるわけです。
野球において一つ共通するキーワードがあって、それは「家族」です。一人を呼ぶより家族を呼べれば当然チケット代も増えます。しかも飲食やグッズなどのチケット外収入も見込めます。子供を呼び込めばそこに親がついてくる、というわけです。だから野球場はいかに家族に楽しんでもらうか、子供だけでなく親にも楽しんでもらうか、ということと、いかに滞在時間を伸ばすか、ということを考えています。滞在時間が延びればその分使うお金も増えますよね。
話がややそれましたが、チケットを細分化する、というのは「細かなニーズに応える」ということが主目的なわけです。細かなニーズに応えれば当然それに見合った対価を得られるわけです。つまり細かなニーズに対応して興味を持ってくれた人を取り逃さないということがまず大事です。
Vリーグはこのあたりが全くできていなかった印象です。ただ冒頭に書いたように、ホームゲームがチームに移管されるようになって、このような企画シートも多く生まれるようになってきました。
では、NECレッドロケッツの大田区総合体育館でのチケット種別を、先ほど挙げたポイントに当てはめていくと、こうなります