■社員としての「担保」
いや、本来は③かもしれません。③は、選手としての契約なので、つまり選手として活躍すれば年俸も上がります。①②はあくまで社員としての契約なので、選手としての活躍が多少は給与に反映されることはあっても、大きく反映されることはないはずです。チームが優勝したことで観客動員が増え親会社の収益に貢献する、なんてことがないからです。そもそも親会社の母体が大きすぎて経営に対してインパクトを与えないというのもありますし、今までは観客動員の収益が還元されない仕組みになっていたからです。
※給与に反映されない、というのは過去にこんな記事がありました。
ただし現行のシステムだと、バレーボール選手としての評価イコール、給与ではないので、モチベーションを保てない選手も少なからず存在すると僕は感じます。
引用元:Number Web
経営にインパクトを与えないということは一方で赤字でも大した影響がないとも言えるわけで、それでチームが存続できている部分もあります(もっともNECの男子やダイエーのように、親会社の経営が苦しくなったときには廃部に追い込まれるケースもあるのですが)。
ただ。選手にとっては③が一概にいいとも言えないと私は思います。それは、選手としての寿命が短いからです。木村沙織さんだって30才で引退していますし、それを考えると他の選手は下手すると20代前半でバレーボール選手としての人生を終えることになります。その後、長い人生が待っているわけです。
その点社員として契約しているのであれば、その後もその企業の社員として働けるわけです。収入が得られるわけです。食っていけるわけです。よく選手の退団理由に「社業に専念」とあるのはそのためです。もっと言えば人事異動にすぎません。バレーボール部から営業部に異動…そんな感じです。
ちなみに選手の移籍は要は転職ですね。
選手からすれば、バレーボールもできて、しかも一流企業に入社できるというのは大きなメリットなのではないでしょうか。退団後もバレーボール教室などでバレーボールに関われる機会もあるでしょうし。
■業界としては全く成熟していないバレーボール
プロ化というのは、引退後もその業界で食っていけることも欠かせません。例えば野球なら、チームの監督やコーチの他に高校や社会人野球などでの指導者、他にもテレビや新聞の解説者だったりと、それなりに野球だけで食っていける地盤はあるわけです。
ところがバレーボールは、競技人口の多さからいっても指導者としての道は狭いし、テレビ等での解説者としての道もきわめて狭いです。というのもテレビ放映、新聞・雑誌等での解説の機会が少ないし、ライターでもバレーボールだけでメシを食っている人は皆無です。野球やサッカーだけで食べている人もそれなりにはいますが、バレーボールのライターは、野球のオフシーズンにちょうどバレーボールがやっているのでその期間に書く、という人が多いです。
あと、解説者は既に埋まっているというのもあります。解説者はなかなか新陳代謝が進まないからです。解説者に引退はないからです。ただ、最近DAZNでの中継で解説者の出番が増えている印象があり、少しは市場ができているのかもしれません。
■バレーボールを支える親会社の存在
ということを考えると、プロ化は目指すべきものではあるにしても、少しでもそういう人が増えればいいな、という話ではないかなと。当たり前のことですが。
ただ、今のバレーボール界を支えているのは間違いなくVリーグに加盟しているチームの親会社たちだということです。
子供にどんなスポーツをやらせるか、というのは基本的に親が選択権を持っています。子供は希望は言うにしても、実際に道具を買い与えたりするのは親ですし、その競技の強豪校に行きたいと言っても経済的な理由とかで断念せざるを得ないケースもあります。
親が自分の子供にどんな競技をやらせたいか。もちろん親の希望だったり叶えられなかった夢、という要素もあるでしょうが、その道に進んだ場合子供がどうなるか、という将来像も重要な要素のはずです。
今のバレーボールの場合、例え選手としてプレーができなくなったとしても、社員として働けるという担保があるわけです。夢もない話かもしれませんが、それも立派な選択肢なわけです。
実は、女子スポーツにおけるバレーボールは大きなアドバンテージがあると思います。野球、サッカーと比べてバレーボールはメディア露出なり注目度では勝っているのです(サッカーは追いつかれてしまったかもしれませんが、負けてはいないです)。
これが男子になると、野球、サッカー、最近はバスケと、注目度なりでは圧倒的に不利なわけです。そこに対するアドバンテージは、もしかしたら「社員雇用」かもしれないのです。
バレーボール選手が、選手として活躍し、代表として世界で活躍できる。その下地を作っているのは間違いなくチームを、そして選手を社員として受け入れる親会社なわけです。
では、これからのVリーグはどんな会社形態が理想なのでしょうか。
次はその話をします。