「カノアラウレアーズ福岡」事業に見る、Vリーグを救う新機軸

カノアラウレアーズ福岡
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

カノアラウレアーズ福岡に見る、「Vリーグ界の、一つの指標となるチーム」であるポイント。これらは未来のVリーグに何より求められるものではと思います。

①「運営」ではなく「経営」

カノアラウレアーズ福岡が生き残ったのは、まさにこの一言につきます。

実業団方式のチームだと、バレーボールは会社の一部門。損益を厳しく見られることは基本的にありません。実際、売上を上げる部門ではない総務部とかに所属しているケースもあります。となると、チームにかかる予算を親会社から取ってきて、それを予算内で運営することが求められます。

実はプロ野球もそうだったんですよね。かつては親会社の広告宣伝費で赤字を補ってました。それが独自採算を求められるようになり、損益管理が厳しくなった。でもその結果、席種やグッズが増えたりファンサービスが向上していきました。

運営ではなく経営と書くと、金稼ぎかと思われるでしょうが、そうです。金稼ぎです。稼がないと借金を抱えてチームはつぶれてしまいますから。どうも金稼ぎと書くと悪い印象を持つ人が多い気がするのですが、それが、私腹を肥やすとかなら話は別ですけれど、金は稼ぐものなんです(皆さんも働いて生活費・遠征費を稼いでますよね)。

私自身もかつていた部門が分社化され、さらにファンドに買収されたことがありましたが、その結果一つの会社としての損益が厳しく見られるようになった経験があります。ですが、数字がはっきりと見られるようになったこと、さらにそれが評価、もっと言うと給与に直結するようになったことでモチベーションが上がったり、コストをただカットするだけではなくアイデアを絞ったり、数字が明確になることでいろんな手を考えるようになったことがありました。

これが経営だと思います。つまり運営から経営になることでよくなることはたくさんあるんだ、ということをお伝えしたいです。例えば実業団方式のチームでも久光は分社化してSAGA久光スプリングス株式会社になってますし、PFUもPFUライフエージェンシーが母体になることが発表されていますし、バレーボールを事業として独立採算にしていく流れは新Vリーグになれば加速していくと思います。

これからのバレーボール界に何より求められる人材は、経営のプロではないでしょうか。プロでなくても、自分を個人事業主として捉えているかどうか、が何より大事では。

②明確な経営戦略

戦略と言っても、試合の戦略とかではないです。また、単純な補強戦略でもないです。どういうことか。

まずは経営戦略があります。改めて前述のロードマップを見てみましょう。

2027年までにV1に参入、売上6億円と明記されています。しかもサポーターの人数も。

これが戦略です。

しっかりと売上目標も、そしてそれだけでなくてサポーターの人数も掲げられています。しかしこれ、1月に発表されたものですが、既にSVリーグの運営費は6億という数値が報道されていたので指標に取り入れたのでしょう。こういう風にライセンス獲得の条件がはっきり明記されていると、そこから逆算してどうやって6億稼ごうか、とチームに考えさせるのは新Vリーグに向けた改革のいいところだと思います。

こういう戦略があるから、そのためにはチームを強くしなければならないし、そのためにはこういう選手が必要だよね、と、経営戦略に基づいた選手獲得戦略が生まれることです。はっきり言うと目の前の一シーズンのための補強ではなく、長期視点での補強。はっきりとした裏付けのある補強ということですね。

その戦略の一環で、サポーター二万人のためには実力もありかつ人気の選手も必要だよね、ということで賀谷選手の獲得に至ったのでは…とも思えるわけです(人気だけで獲ったと言っているわけではないので誤解なきよう)。

こういう経営戦略を立てているVリーグのチームって、姫路みたいに元々独立した会社ならあるでしょうけれど、チームが一部門になっていればここまで作っているケースはないのではと思います。でも、これからはどのチームも必要になります。

ちなみに今は2027年までで終わってますけれど、数年もすれば優勝、代表選手輩出、観客動員〇万人、売上〇億突破…といった新たなロードマップが生まれてくるのではないでしょうか。

ただ、経営と戦略だけでも足りないピースがもう一つあります。そう、再三お話ししてきた福智町という地域の話です。