「カノアラウレアーズ福岡」事業に見る、Vリーグを救う新機軸

カノアラウレアーズ福岡
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

福智町とホームタウン協定締結、福智町に移転(2022/3)

カノアラウレアーズ福岡の前身が福岡春日シーキャッツだという話はすでに述べましたが、そのときのホームタウンは春日市。カノアラウレアーズ福岡になってから(当時はカノア福岡)は福岡市を拠点としていたようですが(当時運営会社は福岡市にありました)、2021年8月に福智町とフレンドリータウン協定を結んだことを皮切りに、福智町との関係を強化していきます。

ちなみにこのフレンドリータウン協定締結でも、調印式の様子が地元のRKBテレビでも取り上げられているので、それなりに注目度も高かったようです。そして2022年3月にホームタウン協定を締結して、拠点を福智町に移転します。それまでは練習拠点(体育館)の確保も大変だった(一個人として空いている施設に申し込む必要がある)ところ、地元の施設を優先的に利用できるようになったのではと思います。

ようやく我が家が見つかったと言いますか(「ホーム」タウンですからね)、そんな安心感は間違いなくチームにとって力となったことでしょう。またあわせて選手含めた3名が福智町の地域おこし協力隊に任命されています(冒頭の熊本比奈選手の記事によると、今は7名にまで増えているとのこと)。ちなみに地域おこし協力隊は、町の職員となって文字通り地域おこしを行う人たちのこと。公務員ではありませんが、町から給与が出ます。

なお、Vリーグ昇格決定時の町の広報紙によると、町は練習拠点を提供する代わりにバレーボール教室などで街のスポーツ振興に協力する、というのが一連の協定で定められているようです。

ちなみに福智町は何もカノアラウレアーズ福岡一辺倒というわけではなく、プロフットサルチームのボルクバレット北九州とも2020年8月にフレンドリータウン協定を結んでいます。つまり町長の思い入れでカノアラウレアーズ福岡にだけ加担しているというわけでは決してないです。あくまで町を活性化させるスポーツチームの一つ、として考えています。ただ上述の広報紙によると中高とバレーボール部のご出身なので、話が早かった部分はあるでしょう。

ちなみにカノアラウレアーズ福岡と福智町をつなげたのが前述の森さんです。実は福智町のご出身なんだそうです。

「スポーツでのまちづくりに力を入れたい行政に話をしました、1週間後に町長と面談ですので資料の準備をお願いします」「Vリーグ機構の参入条項を調べたら地域との連携が必要と記載がありましたので。」

カノアラウレアーズ福岡「【 第8話 】福智町との出会い」より

この福智町との連携は非常に大事な話なので、最後に改めて説明します。

熊本比奈選手との邂逅(2021/5)

前述した熊本比奈選手は、このタイミングで加入しています。Vリーガーだった彼女の、地域リーグのチームへの加入はちょっとした話題になりました。

熊本選手は福岡県朝倉市のご出身でいわばUターン。元々は強豪・東九州龍谷高校で主将として春高バレー準優勝に導き、その後トヨタ車体、ブレス浜松と歩んでこられたのですが、ケガに苦しめられた現役生活だったようです。ようです、なのは私はVリーグにハマったのが最近なので、現役時代の記憶がないのです。オールスター、そして19/20シーズンの東京大会に居合わせてはいるのですが…。探したらこんな写真が出てきました(4年後にチームメイトになる賀谷選手との対決という)。

チーム公式のヒストリーによれば、今後の選手生活を考えて最後は地元で…というのと、Vリーグのチームのない福岡をバレーボールで盛り上げられれば…という思いからだそうですが、もしかしたらチームに接触したのは熊本選手からかもしれません。いずれにしても彼女とチームの出会い───邂逅───が、選手の大量退団など当時どん底にあったチームに息吹を加えたことは間違いないです。極端な話、蘇生といってもいいのでは。

そして何より。Vリーグに限らずバレーボールのチームが増えるということは、このようにUターンなどの受け皿ができるということです。Uターンして地元のチームに加入し、Vリーガーの経験をチームに注入してチームをVリーグ昇格に導く…

今まではVリーガーを引退した後はなかなかバレーボール関連の仕事につくことが難しかったと思いますが、それも裾野が広がれば機会も増えてきます。熊本比奈選手のようなケースが増えてきたらいいなあ、と思います。

と、まだチームの過去はありますが、それは既に触れている部分もあるのでこれ以上はいいでしょう。過去はチームで物語風に掲載されていますし、いずれは映画化も…みたいな話もあるそうなので!

長々と話してきましたが、ここから冒頭にあげた「Vリーグ界の、一つの指標となるチーム」であるポイントを最後にお話しします。