「カノアラウレアーズ福岡」事業に見る、Vリーグを救う新機軸

カノアラウレアーズ福岡
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

フィナンシェでトークン発売(2023/1)

「フィナンシェ」とはトークン型のクラウドファンディングサービスのこと。JリーグやBリーグのチームも参加しているサービスに、Vリーグでは唯一カノアラウレアーズ福岡が参加しています。

トークンと言われてもなんのこっちゃ、という方が多いと思います。まあ私も完璧に把握しているわけではないのですが、今回のカノアラウレアーズ福岡の例で簡単に言うと株を持つということです。ただしそれがいわば仮想通貨のように実体のないもの(株は株券という実体があります)、というのがこの場合のトークンです。

株ですので、価格は変動します。どういうときに変動するのかは細かく見ていないのでわかりませんが、普通に考えれば勝っていたり有名な選手が加入すれば上がるのではと思います(景気動向なども、フィナンシェでのトークンの相場にも影響されるのかもしれません)。

ちなみに私も一つ購入しているのですが(500円で買えます)、トークン購入者だけのページがあります。選手による限定日記や情報公開前の先行情報とか、要はかつての携帯公式メニューですね。ちなみにユニフォームデザイン投票も実施してました。

ちなみにファンクラブもありますが、その特典とは差別化できています。つまりチームにとってこのトークンは、新たな収入源になっているわけですね。もっともチームの価値を上げていかないと株価は下がりますし、下がれば当然手放す人も増えてきます。チームの経営に直結するという点ではシビアですね。

なお、トークンは株という側面もあるからか、サイトにはロードマップも掲載されています。ロードマップを公表しているVリーグのチームって見たことないです。こういうのも、カノアラウレアーズ福岡という「事業」を見ている思いです。

S3ライセンス獲得、Vリーグ参入決定(2022/10)

カノアラウレアーズ福岡にとっては悲願のライセンス獲得となりました。というのも実はカノアラウレアーズ福岡は、前年に一度ライセンス獲得に失敗しています。チームのサイトにあるヒストリーを見るに、前身の福岡春日シーキャッツでの実績が認められなかったことも影響しているようです。

福岡春日シーキャッツは2018年に設立されたチームで、Vリーグ昇格の条件となる実績もいわゆる地域リーグでそこそこ残していたのですが、カノアラウレアーズ福岡(当時はカノア福岡)にチーム名が変わった際に運営会社も変わり、そして何より選手が全員退団したこともあって、当時の実績が認められなかったようです(要は継続性がなく別のチームとしてみなされた)。

※詳細はチームに掲載されているヒストリーより。

詳細は後述しますが、その後の経営体制の強化などもあって、晴れてVリーグ参入が決定したわけです。当たり前ですが、Vリーグに入れるかどうかで入ってくる収入はスポンサーや入場料など全然違います。チームにとっては死活問題だけに、ようやく念願叶った、というところでしょう。

雇用スポンサー撤退で全員無職に(2022/10)

前述しましたが、元々福岡に思い入れの深い私は、福岡にVリーグのチームができないかと注目していました。なので福岡春日シーキャッツも(クラファンにも参加しています)、そしてその後継のカノアラウレアーズ福岡の動向にも注目していました。

そんなときに、2022年6月に雇用スポンサーがついて、選手全員がその企業に転職するということも知っていました。それまでは選手たちはバラバラの職場で働き、就業後に体育館などに集まって練習するなどチームとして活動していたのですが、そこに選手たちの雇用の受け皿となるスポンサーが現れたのは、めちゃくちゃ大きかったはずです。当然チームの活動にも理解があるでしょうから、例えば大きな試合が近い時は就業時間を減らしてくれるとかそんなこともあるはず。

ところがこの会社、今年になって自己破産を申請しました。スポンサーを降りたのは前年10月なので、その頃には経営が悪化していたことが伺えます。ちなみに自己破産したのは新聞沙汰にもなった事件(スキャンダル)が影響しているのですが、カノアラウレアーズ福岡には全く関係のないことです。

ただ、何より重要なのは、選手たちはいったんそれまでの職場をやめているんですよね。やめて、この雇用スポンサー企業に転職した。これで安心してバレーボールに打ち込める、とホッとしたのも束の間、たった4ヶ月でスポンサーから撤退したということは、その時点で退職になったはず。

もしあなたが思い切って転職した会社から、たった4ヶ月で首を切られたらどう思います?絶望しますよね。特にカノアラウレアーズ福岡にとっては、待ちに待った待望の大型スポンサー契約で、これで一安心、と思った矢先にです。このままバレーボール選手として生きていていいのか、と思うくらいの出来事だと思います。

ちなみにその後選手たちの働き口がどうなったのかはわかりませんが、この経験が「雇用を自分たちで作り出す」という、冒頭の熊本比奈選手の株式会社MIRAi立ち上げにつながったのではないでしょうか。

そんな大事件も乗り越えてきた、ということは知っていただきたいなと思います。せめて4ヶ月だったのでまだチームにそのスポンサーの色、印象があまりつかなかったことだけは幸いだったのかもしれません。

さて、次がこのチームの核、コアといえる部分になります。まだ一年たっていないのに、いよいよ核心です。