「カノアラウレアーズ福岡」事業に見る、Vリーグを救う新機軸

カノアラウレアーズ福岡
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

まず、皆さんうなぎと聞いてどこを思い浮かべますか?浜松、愛知(三河一色)、鹿児島…といったところでしょうか。
※ちなみに三河一色はデンソーのホーム・西尾市(市町村合併で一色町が西尾市に統合されました)です。浜松といい、Vリーグ女子とうなぎは縁が深い!?(笑)

そこで福岡が思い浮かぶ人はいないでしょうし(知る人ぞ知る名店なんかはありますが)、カノアラウレアーズ福岡の本拠地・福岡県福智町がうなぎの名産地かといったらそんなことは全くありません。そもそも山の中の町ですし、失礼を承知で言いますが、皆さんがパッと想起するような「これ」という名産品もありません。

私自身、出身でもないのに福岡は詳しいですが(第二の故郷です 笑)、それでも福智町は全く知りませんでした。調べて、ああ、筑豊地域かと知ったくらいです。簡単に言うと、かつては石炭の炭鉱で発展したものの、閉山に伴う人口減に悩まされていて、工場誘致など再生に取り組んでいる、という地域。

私自身一度訪れたことがありますが、すみません、「何か」がある町ではなかったです。訪れたのもカノアラウレアーズ福岡があるから、というそれだけの理由でしたし、それがなかったら訪れることもなかったでしょう。

つまり何が言いたいかというと、うなぎを福智町の名産にしてしまおう、というのがこの株式会社MIRAiの取り組みなんですね。ちなみになんで海もない町でうなぎの養殖を?と思われるかもしれませんが、うなぎに限らずこの「陸上養殖」というのは、最近事例が増えているんです。うなぎもかつてと比べて高騰しましたし、生産量減少を食い止めるための陸上養殖というのはいわば最先端。

株式会社MIRAiはそういう点でも「挑戦」なんですよね。ベンチャー企業としての挑戦、起業Vリーガーという挑戦、絶滅危惧種であるニホンウナギ養殖の挑戦、陸上養殖という挑戦、そして福智町に新たな名物を作る挑戦…

ちなみにうなぎとなれば当然うな丼ですが、福智町はブランド米があるので、福智町で完結できるメリットもあります。

また、社長就任報告の際に熊本比奈選…社長が投稿していたこの建物、調べてみるとどうやら数年前に閉店した福智町の飲食店のようなんですね。一種の空き家活用といいますか。それも立派な町おこしだと私は思います。

といっても先ほどのバレーボールマガジンの記事にあるように、この事業を熊本選手が発案したわけではなく、別の人が計画していたものを熊本選手が「私がやりたい」といって立候補した形なのですが、その方については大変重要な人物なので、後述します。

賀谷明日光選手獲得(2023/4)

2023/4/10に、チームから賀谷明日光(がやあすみ)選手の加入が発表されました。

賀谷選手についてはご存知の方も多いので詳しくは書きませんが、Vリーガーとしては屈指のインフルエンサーです。インスタのフォロワー数は2.5万人で、代表選手でも、そしてV1でもない選手としては異例の多さです。そりゃ、古賀紗理那選手の21.5万や石川真佑選手の11.6万には及びませんが、試しに皆さん、推しの選手のフォロワー数を見てみてください(ちなみに私の場合、元推しの4倍のフォロワー数でした)。

もちろんそんな多くのフォロワーを獲得するにはご本人の努力の賜物なのですが(余程の有名人ではないインフルエンサーは基本そうです)、それはファンが多いだけでなく、情報発信のスペシャリストでもあるということ(どういう構図ならみんな喜んでもらえるかというノウハウがたまっている)。こういう人材はこのご時世、引く手あまただと思います。

なので、賀谷選手が東京スリジエを退団した時、そしてモデルで登場した雑誌「Safari」内にあった「Vリーグ復帰を目指している」の文字を見て、カノアラウレアーズ福岡に入るのでは、と思ったんです(ちなみに賀谷選手は福岡の出身ではありません)。というのも詳細は後述しますが、このチームは情報発信には何より力を入れているチーム。なので移籍によくある「入団」「加入」ではなく、あえて獲得としました。たぶん、チーム側から彼女にオファーしたんじゃないかな。もちろん戦力補強ではありますが、それ以外の効果も加味されての、チームとしての戦略上のものだと思います。

賀谷選手については先日記事が出てましたので貼っておきます。

父は鹿島などでプレーしたJリーガー 女子バレー賀谷明日光が明かす、Vリーグでの「仕事とプレーの両立」の大変さ
賀谷明日光インタビュー 前編 4月上旬、昨シーズンに東京都実業団バレーボール連盟の東京スリジエでプレーしていた賀谷明日光が、Vリーグ参入が内定しているカノアラウレアーズ福岡に入団することが発表された。 父はかつて、鹿島アントラーズやベガルタ…

また、東京スリジエでの賀谷選手についてはかつて記事にしていますので宜しければ。

さらにさかのぼると、だんだんこのチームの、今に至る「骨格」が見えてきます。