「カノアラウレアーズ福岡」事業に見る、Vリーグを救う新機軸

カノアラウレアーズ福岡
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

今シーズン(23/24)からVリーグ参入を果たすカノアラウレアーズ福岡。チームの取り組みがいろいろ話題になっているのですが、結論から先に言うと、個人的にはVリーグ女子の中で一番バレーボールを事業として捉えているチームではないか、と思っています。

私自身福岡にはそれなりの縁があるので、そこにVリーグ参入を目指すチームがある、ということで前々から注目していましたので、カノアラウレアーズ福岡というチームを私なりにご紹介させていただきます。今後SVリーグ設立など発展が期待されているVリーグ界の、一つの指標となるチームだと私は思います。

こういう記事は普通、時系列(古い順)からなのですが、今回あえて逆にします。昔話をしてもしょうがないでしょ、と。そういうチームなので。

起業Vリーガー爆誕(2023/5)

2023年5月10日に、突然こんなツイートが飛び込んできました。カノアラウレアーズ福岡の熊本比奈選手が、なんと、会社を立ち上げて社長に就任しました。

選手が社長就任!確かにそれまで通販形式の食品サイト「ツナグヒナドリ」で店長をしたり、選手という枠にとどまらない活動はされていたのですが、さすがにこれはびっくりしました。

詳しいことはバレーボールマガジンのインタビュー記事をお読みいただければと思うのですが、

社長兼Vリーガー誕生! カノアラウレアーズ福岡・熊本比奈が株式会社 MIRAiを起業し、うなぎ屋をオープン。「私が起業してチームや引退した選手を養う!」目指すは、うなぎの総合デパート
カノアラウレアーズ福岡 熊本比奈選手 起業インタビュー

私なりのポイントは下記です

  1. 例のない起業Vリーガー
  2. 選手たちのセカンドキャリアとして、選手自ら会社を立ち上げ社長に
  3. 地域の活性化に貢献するベンチャー事業

そもそもVリーガー兼社長、という選手は女子では今まで聞いたことがありません(過去にいたのかもしれませんが私は新規ファンなので、いたら修正します)。少し近い例だとリガーレ仙台の立ち上げに携わった佐藤あり紗さんですが、選手兼監督であっても社長ではないですし、リガーレ仙台はバレーボールチーム。一方熊本選手の場合はチームではなくベンチャー企業の社長。要は起業家ですね。

スポーツ選手というものは、ずーっと現役生活を続けられるわけではなく、セカンドキャリアも大事なわけです。でも、その競技しかやってないと、それこそパソコンも満足に使えなかったりとかそういうケースも当然出てくるわけですよね。仮に26歳とすると、大卒の社員なら入社5年目でそこそこバリバリやれていますが、引退したスポーツ選手は新入社員どころかそこからさらにマイナスくらいの位置から社会人スタート、といっても過言ではありません。つまり、同い年の社会人に差をつけられている。

当然スポーツでの経験を活かせる仕事があればいいのですが、それがなかなか難しくて、体力とか体育会気質とか、そういうところにフォーカスが当たりがちな気がします。つまり、スポーツ一辺倒でやってきた人が、いわゆる一般社会に飛び込むには(しかも遅れて)、かなり大変だということです。

でも、社長がバレーボール選手だったら、そのあたりの理解は当然ありますよね?つまり、自分の選手経験を活かそうとしてくれるのでは、と思いますよね。まあバレーボール選手だけが社員というわけではないでしょうが、選手自らが立ち上げた会社だったら入ってみたい、と思う選手は多いのではないでしょうか。

かつ、チームとしても選手獲得の強みにもなるかもしれません。だってゆくゆくは熊本選手が立ち上げた株式会社MIRAiが、カノアラウレアーズ福岡の親会社になるかもしれないから。実業団というのはまず会社があってそこにチームがぶら下がっている形で会社が先なのですが、もしかしたらチーム、というより選手が先で、後から親会社が生まれる、なんて逆転現象になるかも!!??

ただ、単に会社を立ち上げたのではなく、その会社の事業にももっとご注目いただきたいと思います。そう、株式会社MIRAiは「うなぎ」を扱う会社だということ。それがどういうことか。