Arrows you know?~東レアローズ22/23ファイナル~

東レアローズ滋賀
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

結果は結果。だが、最後の最後にことごとくブロックにつかまったことだけが敗因ではない。それ以前にこのセットでもっと点差を広げなければならなかった。もっと言えば序盤が悪すぎたからこういう展開になったのだ。敗因というのは個人に押し付けるものではなく、チーム全体のものであるべきだ。ただ、エースの宿命なのか、最後のシーンだけでいろいろ言われてしまうのは本当に残酷だ。事実、彼女には結果だけを見た心無い批判も寄せられていた。

そして、負けたのは何も選手をはじめとしたチームだけのせいじゃない。私自身、チャンピオンシップポイントになったときは取り乱したし、14-14と追いつかれて迎えたタイムアウトでも、ベンチ側の席にいたのに私はどこか祈るように見ていただけで何の声もかけなかった。選手たちもどこか真剣な表情になっていたけれど、今にして思えばみんなで笑い合うくらいの余裕があればよかったし、たかがファンとはいえそんな声掛けもできたのではないか。事実、同じようにフルセットにもつれ込んだ3年前のファイナルでは、フルセットが始まる前の円陣でJTの、あの吉原監督がめっちゃ笑っていたのが印象的だった。

「こういうときは笑うくらいの余裕があればいいのに」と思っていたけれど、いざ自分も同じ立場に置かれるとそんな余裕はなくなっちゃうんだな、というのは気づきだった。そしておそらくだけれど、このファイナルの後で「自分にも何かできたはず」という呵責が生まれたアロともは多いと思う。

それはつまりチームを他人事ではなく自分事として考えているということ、だ。

負けたことはもちろんアロともとしては悔しい結果になったけれど、一方で、すがすがしさもあったのではないだろうか。

それは、選手たち、もっと言えば関選手と石川選手が貫いたから。

皇后杯決勝の悔しさを胸に、次こそはトスを上げよう、トスをもらおう、と誓ってやってきた二人の絆であり、約束が貫かれたから。

だから二人は敗れてベンチに戻ってきたときに笑ってお互いをたたえ合ったのだ。

二人が信じて貫いてきたことを、アロともだったら受け入れるはずだ。
だって。この日の代々木に連れてきてくれたのは、二人の存在が大きかったから。

試合後。私が初めて企画したアロとものオフ会でみんなと笑い、そして飲んだ。負けたけれどアロともたちは初対面の人も多い中みんなで渋谷のレンタルルームに集まって、アロじょの健闘をたたえ合い、そして笑いあった。企画したのは、アロともとしての矜持を示したかったのもあった。みんなを見ていて、やってよかったと思った。

その帰り道、すっかり夜も更けた渋谷の街は、この日Vリーグのファイナルがあったことなど微塵も感じさせない相変わらずの渋谷の夜で、あまりの人の多さに気持ちが少し晴れた。自分の感情は、大勢の人たちに紛れる形で1/1が1/1000くらいになっていった。

後日、「神様に嫌われるようなことをしたのか」と言ったアロじょがいた。とんでもない。5シーズンで3度のリーグファイナル、3年連続の皇后杯決勝…めちゃくちゃ愛されているではないか。しかもまだ挑戦を続けられるのだから。

だから。代々木で終わると思ったドラマは、まだ続く。韓国ドラマもびっくりの展開だ。
関選手も石川選手もそれぞれまだ23歳と22歳と若い。この二人が、もっともっと大きな舞台で、もっともっとすごい活躍をしてくれるかもしれない。もっとすごいフィナーレが待っている。ドラマを見続けようではないか。

さあ。また始めようか。

───

ファイナルの余韻冷めやらぬ中、二人の選手の退団が発表された。一人はまるで正式決定かのような移籍報道も出ていたので驚きはなかったが、もう一人はびっくりした。私が何も発信(発言)しなかったので落ち込んでいると心配してくれた人もいた。だが私は元々早く海外に移籍してほしいと思っていたし、東レを飛び出すことは大歓迎なので(国内移籍だと話は少し異なるが)、何かを言う必要もなかっただけの話。推しが決断したことに何を言う必要があるのだろうか。

ただ一つ言えるのは、彼女もまた、始まるということだ。

As you know。意味は「ご存知の通り」。
Arrows you know?。意味は…「(このファイナルの結果は果たして)ご存知の通り?」。

結果は結果だが、あの日のファイナルが何だったか、というのは私は本当にわかっているのかどうか。これを書いた今もわからない。

Arrows you know?
~東レアローズ22/23シーズン~

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