Arrows you know?~東レアローズ22/23ファイナル~

東レアローズ滋賀
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

このデンソー戦は相手の得点源であるネリマン選手が不在だったが、その分チームの分析が役に立たなかったのと、守備が向上したこともあって序盤から苦戦を強いられた。第一、第二セットを二点差ながら落とし、第三セットは優位に試合を運んでいたが終盤差を詰められ22-20に。そこから一点を取り23-20となったところで、二枚替えを行った。あと二点という中でわざわざ替える必要があるのか…とは思ったのだが、これが結果的に勢いを止めてしまい、23-22と一点差に追い上げられてしまった。

結局すぐに元に戻してこのセットを取ってセットカウント1-2としたものの、果たして何のためにわざわざ二枚替えをしたのか、素人目には理解に苦しむ采配だった。最終的にはフルセットに持ち込みこの試合をモノにしたのだが、試合終了の瞬間に越谷監督が両手を挙げて歓喜の輪に入り込んだのが、この試合の全てを物語っていた。それなりに長く東レを見ているが、こんな越谷監督は初めてだった。

越谷監督のあの行為が何を意味していたのかは知る由もないのだが、現地で見ていた身としては「お前らよくやった」という思いによるものなのかなと思った。もしかしたらそこに「オレのミスを取り戻してくれてありがとう」というのもあったのかもしれないが…。

ただ、劣勢、かつ自らが招いた劣勢でもこうしてきちんと試合をモノにする、という点で、かつてにはない強さをこのチームから感じた。黒後選手も、スタメン出場こそ一試合もなかったがリリーフサーバーで出るなど、何らの形で試合には出続けた。特に野呂選手からスイッチするケースが多く、存在感はだんだん大きくなっていった。

ただ。開幕前こそ黒後選手の復活がカギだと思っていたものの、試合を見るにつけその考えは変わっていった。復活=かつての姿に戻ること、だったのだが、それを求めてはいけないなと。というのも、そもそもそれを彼女が目指していないのではないか、ということにだんだん気づいたからだ。

要はプレースタイルの変換。私の感想でいえば「巧さ」だろうか。野球でいえば剛腕で鳴らした投手が、変化球も織り交ぜた技巧派に代わるようなもの。選手寿命が長いのはどちらか、というのはもう言うまでもあるまい。

そんな新たな黒後愛像というか、それが見えたのもこのデンソー戦だった。ああ、もう彼女は大丈夫だな、と。第二セット途中からの出場であるが、フルセットにもつれ込んだので実質三セット出ていると言えるし、となれば一試合フルで出たと言える。だからこのデンソー戦の勝利はとても大きかったと思う。何より試合後に関選手とガッチリ握手を交わしていたのが物語っていた。

こうしてレギュラーラウンドが終わりいよいよファイナルステージに突入するわけだが、それなりに今シーズン現地で東レを見てきた私は、一抹の不安を抱えていた。