あのとき、ドラマがここで完結すると思った。皇后杯決勝のあのシーンからのフィナーレが、ここで───
2022年10月の輪島から始まった東レアローズの22/23シーズン。毎年、櫻坂や日向坂といった坂道系グループの世界に沿ったキーワードを勝手に決めている私は、今シーズンのそれを「Arrows you know?」とした。元は櫻坂46の最新アルバム「As you know?」からで、As you knowは「ご存知の通り」という意味(この最後が?になっているところがいかにも櫻坂なのだが、その話はやめよう)。
(皆さん)ご存知の通り、東レアローズというチームは…「Arrows you know?」はそんな感じだ。それはさておき今シーズン、チームとしては二つのカギがあったと思う。
・世界選手権など、世界を舞台に戦った代表組の躍動
・黒後選手の復帰、復調、そして復活
昨シーズンはファイナル3で久光に敗れ3位に順位を落とし、しかも目立った戦力補強もなし(一方で退団も少なかったのだが)。そこを埋めるのは代表組の成長であり、昨シーズン不在で実質的に新加入の黒後選手の存在。そう思っていた。
だが。その前の国体などで明らかになっていたが、開幕時点での黒後選手は復活どころかまだ復調には程遠く、一年間のブランク(本当に全くボールに触れていなかったのかもしれない)をどう取り戻していくか、がカギになると思った。それこそ内定選手みたいに年明けから戦力になってくれれば…。
チームは序盤から好調だった。何より年内は土日の連敗がなく、負けてもフルセット負けだったので、毎試合必ずポイントを取っていた(一方でフルセット勝ちも多くてポイントを取り逃してもいたのだが)。黒後選手は出場してもリリーフサーバー中心ではあったが、関選手は世界選手権でも日本の正セッターとしてトスを上げ続けたこと、特にブラジルを破ったことで自信がついていたし、石川選手はアタックもさることながらサーブもサーブレシーブもさらに磨きがかかり、手が付けられない選手になっていた。
そして初めての代表入りで、世界選手権には出られなかったけれどVNL(ネーションズリーグ)で活躍した小川選手は、序盤はその悔しさを取り戻そうとした意気込みからか空回りしていた印象があったが、徐々に調子を取り戻していた。やはり世界を舞台に戦うと、選手は一回りも二回りも成長するのだなと思った。東レは眞鍋ジャパンの恩恵をだいぶ受けていたと言って間違いないだろう。
リーグ戦の好調さそのままに皇后杯も勝ち上がり、気づけば2020年から3年連続のファイナル進出。だが、これまで立ちはだかってきたJT、久光に代わる新たな壁がここで現れた。この試合はとにかく序盤からボロボロで、スタメンだった小川、大﨑の両ミドルが早々に下げられたのが何よりの象徴だった。1ー3で敗れたが、よく一セット取ったというくらいの内容だった。代わりに出た井上、深澤両選手の奮闘の賜物だが、とにかく相手のサーブに気圧され、後手後手に回った。そんな試合だった。
年明けのウカルちゃんアリーナでの試合後の挨拶でキャプテンの中島選手が、この試合の後に選手たちだけで話し合う機会を作り、優勝というものを意識しすぎていた、みたいなことを言っていた。確かに気圧されたことも含め、チームがガチガチになっていた印象は否めなかった。相手がサーブのいいチームだったこともあり、なおさらだった。
こうして年内は終わったが、2位で終わったことはほかのどのチームより上位対決が多かった───JT、久光、埼玉上尾───ことを考えれば上々だと思っていた。そして年明けからの後半戦で、私はある選手がキーマンになると思っていた。優勝のカギを握るのは彼女だ、と。先に言っておくと黒後選手ではない。