期間限定Vリーガー・中澤恵選手の3ヶ月の価値

東京サンビームズ
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まず、バレーボールに明け暮れた生活が終わり、卒業までの短い期間で学生生活を満喫する方法もあった。おそらく世間一般が思い浮かぶ「キャンパスライフ」とは無縁の日々だっただろう。だが、彼女はそれよりVリーグでプレーすることを選んだ、ということがまず一つ。

そして何より。記事にある通り彼女にはVリーグ入りという選択肢もあったが、彼女は冷静に自分の実力を見極めていたのだ。

自分がエースとして1部に上げられないのであれば、トップのステージでやっていく技術や資格があるのかな、とは思っていたんです。自分の力で上げられないのにVリーグでやっていけるわけがない、みたいな指針は私の中でありました

Vリーグもビーチでの五輪もありえた? 早稲田大 中澤恵が多くの可能性から競技引退を選んだ理由とGSS東京で見せたい姿(月バレ.com)

つまり、そんな優秀な人が短期間でもVリーグでプレーしたいと思った。そこが何より大事だと私は思う。

とはいえ。誰もが大学卒業までの3ヶ月だけVリーガーになれるわけではない。実業団のチームであれば親会社に就職するわけで、3ヶ月だけその会社の社員になる、なんてケースはほとんどない(たった3ヶ月ではチームとしてではなく企業として戦力にならないから採用できない)し、それ以前に大学在学中だから4月まで入社できない。

だから今回彼女がVリーガーになれたのは、所属チームであるGSS東京サンビームズの存在が大きいのだ。

なにせ母体であるグリーン・サポート・システムズ株式会社は派遣会社。(あくまでも)極端な言い方をすれば、彼女をアルバイトとして3ヶ月限定で採用したようなものだ。社員を3ヶ月限定で雇用するのは雇用契約の締結など大変だろうが、アルバイトとしてならそのハードルはグッと下がるし、おそらく派遣会社だけにそういう契約が柔軟にできる会社なのだろう。

ちなみに、19/20シーズンぶりに見たGSS東京サンビームズについて感じたのは、選手たちがなかなか全員での練習ができない中、ようやく揃った週末の試合であれだけの集中力を発揮するのはすごいチームだと思った(試合前練習も「全員が揃う貴重な機会だ」と、ものすごく大事にしている印象を受ける)。

※GSS東京サンビームズについては過去書いているので、宜しければ。

でもそれは派遣会社として、いろんな業務に従事する選手の集合体だからとも思った。つまり、いろんな個性を柔軟に受け入れ、かつ即時にチームとしての一体感を作れるというか。でも、なんでそれができるかというと、派遣社員だからだと思う。派遣社員ということはいわば自分だけの特技であり武器を持って、それで勝負する人、なのだ(勝負しているかは別として私もそうなのでつくづく感じる)。いわばプロの集まりなのだ。

だから、今回の彼女とGSS東京サンビームズをモデルケースに、今後このような期間限定Vリーガーなんてのも増えたらいいなと個人的には思う。