⑧「7人目の選手」齋藤監督
私はバレーボールファン歴が浅いので、齋藤真由美さんという人は存じ上げていなくて、今回初めて知りましたが、すぐに虜になりましたね。何が、というと、常に選手と一緒に戦っているんですよ。アタックが決まれば両手を上げて喜んだり、そのままその選手とハイタッチしたり。
監督って一歩引いた目線で見る必要があるので、コートにいる6人とは一線を引くのが普通です。得点を決めても感情を表すことってあまりないです(ここぞというときは表す人はいますが)。ですが、齋藤監督はどこか7人目の選手のようなんですよね。一番近くにいられるのだから、選手たちの(心の)そばにいよう。寄り添おう。そんな感じかなと思います。
同じ女性のJTの吉原監督だと感情は出さず、ベンチにずーっと座って「見ている」ことを大事にしているのですが、ある意味真逆だなと思います。どっちがいい、悪いかではなく、ただ群馬銀行というチームにはうってつけの監督じゃないかなと思います。
うってつけというのは、選手の個性をつぶさなかったり、自信を与えられる監督なんですよね。そしてそこに思いやりも加わるわけです。それがこの会見のこの言葉に表れていると思います。
2つ以上のポジションをこなせる選手はレギュラーになる確率も高いですし。選手はもっと自分の才能に自身を持っていいと思うんですよね。
上述のバレーボールマガジンの記事より(※原文ママ)
菊地選手の項でも書きましたが、「昔セッターやっていたんですよ」を「ふーん」で終わらせずに「面白い!じゃあまたやってみる?」にできる。もちろんそれにより起用のオプションが増えますし、選手層の厚さ(※厚さ=選手数、ではありません)にもつながる、結果としてチームも強くなるわけですが、選手も出番が増えることで自信がつくし、ステップアップになるんですよね。これはもう、監督というよりは課長とか直属上司といった方がわかりやすいですね。
でもこういう、個性をつぶさず複数ポジションができるならやらせちゃう、というのは眞鍋監督に通ずるものもあります。何が言いたいかというと、齋藤監督の元で能力が開花したら代表入りだって見えてくるわけです。だって眞鍋監督の性格的に、V2からも選びそうじゃないですか。
これは個人的に最近思うことなんですけれど、バレーボールという競技は相当メンタルをやられるというか、「ダメなんだ」というネガティブな思考に陥りやすい競技ではないでしょうか。なにせ強いボールを体で受け、そして体を床に叩きつけるわけで、全身へのダメージは他の競技に比べて大きいと思うんですね。となると精神的にも病んでくるというか。自然と「あれをしてはいけない」「これはダメ」と勝手に思ってしまうのでは…と。それはもちろん指導者にもよるのですが、なんとなく育成世代のバレーボール界は否定型が中心のような気がするんです。いわゆるスパルタですね。
まあ指導者云々は極端にしても、選手たちってネガティブ思考になりやすいのかな…と思うんです。そういうときに肯定型の指導者に出会うのって、めちゃくちゃ大きいと思うんですね。
「えっ?それでいいんだよ」
この一言に救われる選手って、多いと思うんです。
この一言を発せられるのがこの齋藤監督、いや、齋藤真由美という人なのではないでしょうか。
長々書いてきましたが、続いては締めです。