2022/23シーズン、群馬銀行グリーンウイングスの流儀

群馬グリーンウイングス
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

④全てはV1昇格のため

スタメンを固定しないのは、予測のできないどんな状況でも対応できるように。そして落ち着けるように。そのためだと思います。例えば絶対的にエースがいるチームの場合、昇格のかかった大一番で急に不調になったら?怪我したら?

メンバーを固定してきた場合、突然当日になって何人もの選手が一気に離脱したら?今のご時世、全然あり得るわけですよ。

頼りにしていた得点源が急にいなくなったり、普段やってないことを急にやらなければならなくなったら、絶対焦ると思うんですよ。ところが今シーズンの群馬銀行って、得点ランキングの上位に名を連ねるような絶対的なエースはいないし、そしてあらゆる選手起用パターンを一度はやっているから、「ああ、これってあの試合の時と同じだな」になれる。となれば自然と落ち着くわけです。

もし仕事で同僚が急に休みになって代わりにやって、と言われても普段からやってなかったら絶対焦るじゃないですか。えっ、聞いてないよ、と。なのでこの全員バレーは、特定の個人に頼らないという点でリスク分散であり、そして危機管理でもあるんですよね。

チャレンジマッチは二試合しかありません。一試合の重みは半端ないわけです。V1かV2かは、チーム運営を大きく左右します。運営を左右するということは、選手の人生も大きく左右するということです(それこそ会社の経営状況に直結します)。なので選手も当然大きなプレッシャーになるでしょう。

でも、「そのプレッシャーを乗り越えるのが選手だ。頑張れ」になってはいけないんですよ。プレッシャーを低減すること、はできるんですよ。

それが今シーズンの群馬銀行の戦い方、だと思います。

と、これでまとまってしまいそうですが(笑)、このチームはもう少し伝えたいことがあるのでお付き合いください。ここからは個人にフォーカスを当てます。

⑤V1を知る移籍組

今シーズンの群馬銀行の特徴の一つは、V1を知る移籍加入の二選手、白岩選手と道下選手だと思います。まず、昨シーズンは熊本に所属、V2の得点王に輝いていた白岩選手は19/20シーズンまでKUROBEでV1を経験。その頃は私自身もよく見てました。あの体の細さでよくこんな強いアタックが…と思ったものです。ものすごく軽やかなんですよね。

3年ぶりに拝見しましたが、流山ではコートキャプテン申告で手を挙げていて、気づけば彼女もこういう存在になったのか…とちょっと感慨深いものがありました(笑)。そんな、実績のある選手でも総得点ではチームでも8位以下というのですから、いかに競争が激しいかがわかります。OPもできるOHとして、チームの攻撃力において貴重な戦力になっている、そんな印象です。

道下選手もKUROBEからの加入ですが、彼女は何より思いの発信ですね。VTVでの試合の配信のないことでV1とV2の落差に驚かれ、それでじゃあ私が、ということでインスタライブに挑戦されたり、その後もV2の現実を知ってもらいたい、と、GSSの畠山選手とのインスタライブもやってました。

こういう点でもV1を知る選手、という存在はチームにとって大きいと思います。それは何もV1の戦いはこうだ、という戦術面とかではなく、環境面でV1との比較軸を持っていること、だと思います。V1という志を選手たちに持たせられる存在というかな。

彼女のそういった思いであり熱がチーム全体を加熱している。そんな効果を今シーズン、傍から見ていて感じます。