風の谷の東レアローズ2019

東レアローズ滋賀
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

全て、今年の出来事、だった。

かろうじて4位通過、ポイント0から始まったファイナル8、仙台で決めたファイナル3進出、京都で決めたファイナル進出、そして敗れたファイナル。黒鷲旗での優勝。推しの選手の地元での成人式当日の試合、初めてベンチ裏シートで見た2月のウカルちゃん、松山でのみきゃん。神戸での白井選手と堀川選手の抱擁、松山での関選手の涙、花巻での石川選手デビューと初得点、仙台での菅野監督の逆鱗。年始めの黒部大会での新春仕様のアロカムボード(まだ当時はそういう名前じゃなかった)、白井選手の「関選手!」、ヤナの「カンノサン、アイスタベタイネン、オネガイ!」、日高選手と水杉選手の新喜劇、某小川選手の「ブドウは英語でピオーネ」…

全て、今年の出来事、だった。

年の瀬が迫り、ふと今年の東レアローズを振り返ったときに気づいた。こんなに濃厚な一年を送っていたのか!調べてみれば2019年の観戦数は32。他のチームを含めてもトータルでも81試合だから4割だ。

Vリーグにハマっていた2017年3月に札幌に移住し、2018年10月に東京に戻ってきてまた追いかけるようになったのだが、それが一気に加速したのが2019年だった。それまで一人で見るものだった東レの試合は仲間と見る東レに変わり、会場に行けば知り合いがいて、写真を加工してくれるフォロワーさんが一気に増え…気づけばフォトブックを作り、カメラを買い替えていた。黙って撮るだけだったのが、試合中に声を出して応援することも増えていった。観戦者から極端に言えば当事者になっていった。

観戦数が増えたことであらゆることが激変していった。簡単に言えば「I」だったのが「WE」に変わった一年だった。

思うに、このチームを見ることで、熱くなると言うよりはどこかじんわりと心が温かくなる。どこか東レを取り巻く人たちが輪になっているような感覚を、会場で、そしてSNSで覚えていた。五所川原みたいな遠いところまで遠征して、そこでファインダーの中に広がっている光景───試合中と言うよりは控えエリアだったりそういうプレー以外のところだ───のあまりのほほえましさに、このチームを遠くまで追いかけて本当によかった、と思わされることが本当に多かった。

選手だけでなくスタッフ、そしてファン…このゆるやかに過ごす姿はまさに「風の谷」だと改めて思った。そして何より、私も風の谷の住人になっていった一年だった。

先に真面目な話をすると、チームとしては上り調子であると同時に、一つの集大成を見せつつあると思っている。観戦歴4年だし1年半の空白がある、そんなにバレーボールに精通していない身として今の東レについて思うのは、

木村沙織さん、迫田さんが抜けてチームは一気に若返ったが、堀川選手、井上選手、大野選手の第一階層、白井選手、日高選手、中田選手、伊藤選手の第二階層、黒後選手、小川選手、関選手、中島選手の第三階層、石川選手、水杉選手、野呂選手、大崎選手の第四階層と、階層ごとのバランスが非常に絶妙だと思う。そしてそこにパワーと国際経験という貴重なピースとしてヤナ選手が加わる。