伸びた選手、まずは小川選手だ。
今シーズンから土日フル出場と完全にレギュラーに定着した(昨季は井上選手との併用だった)。セット数は昨シーズンの倍で、アタック決定率は全体で三位、日本人なら一位と申し分のない成績だった。そのかいあって初の日本代表選出。そのブロードのスピードのように一気に駆け上がった。
そして関選手。何より黒後選手がいなくなったチームをここまで牽引できたのは彼女あってこそだと思う。限られた戦力の中でいかにやりくりするか、という工夫は、本当に彼女はうまい。ただ、トスワークは元より精神的に「分厚くなった」印象を受けた。見ていてますます頼もしくなった。
最後は白井選手。緊急登板となったキャプテンの座を引き受けられるのは、間違いなく彼女しかいなかった。最初はチームにとまどいも感じられたが(開幕戦はチームが明らかに動揺している印象を受けた)、彼女がキャプテンとして成長していくにつれてチームが安定していった。出場機会は多くなかったが、テクニカルタイムアウトでの選手への声がけは相変わらず絶妙だった。
チームとしてはどうだっただろう。今シーズン29試合(皇后杯含む)現地で見てきた中で感じたのは、弱点を内包したままの戦いだった。野球で言えば7点取られても8点取って勝つ、往年の近鉄野球だった。アタック決定率は1位だが、1セットあたりのブロック決定本数が8位と、言い方は悪いがブロックがスカスカだった。他チームの試合できれいにブロックを止めるMBを撮るシーンが増えていたのだが、何のことはない、ウチの試合で見られなかったからだと気づいた。
おそらく一般の方々には東レは強いチームだと思われているだろうが、私はあまりそうは思わない。弱い、とは言わないが、脆いチームだ。例えるなら、ただゆっくり歩けばいい平均台の上を、わざわざジャンプしながら歩いているようなものだ。たまによろつくので、いつ落ちるかハラハラしながら、つい見守ってしまう。
※ちなみに「私の中での東レ」が詰まった選手が実は他チームにいるのだが、それはいつか触れたい。
ただ、弱点を選手個々の力でカバーできてしまう強さはウチにはある。そこは下北沢成徳など強豪校の選手が集まっているからだと思う。また、若さゆえの伸びしろでもカバーできる。だから春高バレーが好きな人は東レは好きになると思う。野球で言えば甲子園の高校野球が好きな人もそうだ。
脆いという点では、いい時はいいんだけどダメな時はダメ、という差が何より大きかった。そこに何より腐心していたのは越谷監督だった。この記事に何より腐心ぶりが表れている。
・コートの中にリーダーがいなく締める人がいません。そのため立て直すのに時間がかかります。
・選手が本当に勝負に対して「やさしい」です。
・そこまで難しいことを要求しても慌てるだけなので。自分が求められているプレーを失敗しようが思い切ってやってくれればと思います。逆に僕が言うとプレッシャーになります。
上述のバレーボールマガジンの記事より
この記事の越谷監督のコメントは今シーズンのウチが全て現れていると言っても過言ではないし、記事を最後まで読むとその後のファイナル3で起こることも結果的に言い当てている。シーズン最終盤になってもこの状況だった、というのが全てだったと今にして思う。
特に3月の、首位JTに快勝した翌日の岡山戦は、前日の余韻もあったのか、出し切ってしまったのか、明らかに低調だった。河本監督が、前日の岡山の試合を見て気の緩みがあったのではと指摘されていたほどだ。
この試合の、越谷監督のこの言葉が何より響いた。
今もいい時はいいんですけど、もっとできるんですよ、あの人たちは。
上述のバレーボールマガジンの記事より
さて皆さんにお聞きしたい。
選手たちを「あの人たち」と呼ぶ監督をどう思うだろうか。ちょっと考えていただきたい。