東レは若いチームだ。勢いがある一方、脆さもある。石川選手をはじめ選手は揃っているが、崩れるときは一気に崩れてしまう脆さをはらんでいる。そこに、彼女が柱として、地盤として、チームに安定をもたらす存在になれれば…。それが、年明けから少しずつ見られるようになってきた。実際ここまで彼女が交替したのは、西川、野呂、ヤナ、大﨑、小川、井上、関…と主力選手がずらりと並ぶ。
これはファインダーを通して見ているからこそ気づくのだが、彼女が決めると、チームが一つになるのだ。石川選手が飛びつくのがいい例で、何よりチームがまとまる。みんな、彼女の復帰を待ち望み、復調を喜び、復活を期待しているから、だ。だから越谷監督も、その効果を見越した起用をしている印象を受ける。
そして1月29日の愛媛県武道館でのKUROBEアクアフェアリーズ戦は、劣勢になったこともあって石川選手に替えて彼女を投入。アタックも今シーズン最多の7本を決めるなど、攻撃力もだいぶ戻ってきた。その翌週のヴィクトリーナ姫路戦でも真鍋選手とのコンビでの二枚替えというオプションもまた出てきた。
当初は大﨑選手や小川選手との交替でのリリーフサーバー、だったのが西川選手が後衛のタイミングでの交替、やがてヤナ選手との交替も増え、そしてついには二枚替え…。彼女を起用するバリエーションが、段階的に増えてきた。つまり、彼女の復調とチームの強さは間違いなくリンクするということだ。
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10月29日から始まったシーズンは、全チームとの対戦が一巡し、2月18日からいよいよ3rdレグが始まる。全チームと一戦ずつ対戦する、ファイナル4進出をかけた終盤戦がスタートする。まるでそれに合わせるかのように、彼女は復調してきた。
1stレグという第一段階を復帰とすれば、2ndレグという第二段階は復調。そして3rdレグという第三段階は…
復活。
今まではそのような過度の期待をかけるのもはばかられたが、今の彼女なら、もう大丈夫だ。
現時点で二位の東レの、優勝のキーマンは、彼女の復活だ。それが、黒後愛復活プロジェクトのゴールだ。
「僕としては、Vリーグの終盤に間に合ってくれればいいと思っている」(越谷監督)
THE DIGEST「女子バレー東京五輪日本代表の東レ・黒後愛が休養を終え復帰! 守備限定の出場も声援には明るい笑顔も」
群青の歌詞にある通り。
今の彼女は、ありのままのかけがえの無い彼女だ。