ただ、この日は試合前からどこか印象が違って見えた。アタックの順番を待つとき、ふと彼女が会場を見上げたのだ。ああ、ホームゲームっていいなあ。バレーボールっていいなあ。どう思ったかはわからない。だが、どこかフッと笑みを浮かべたようにも見えた。いや、浮かべていないかもしれないけれど、かつてよく見た光景が戻ってきたなあ、と思った。
この試合は序盤の展開から一転、劣勢になったことで彼女も気合みなぎる表情が増え、その意味でもかつてよく見た光景が戻ってきたと感じた。
もちろん、今までもそういう表情はしていたのかもしれない。当たり前だがマスクをしていたから見えなかっただけかもしれない。だが、彼女の心に火がついた…まではいかないにしても、彼女の心に東レアローズが再び、ようやく宿り始めた気がした。
もしかしたら。
この新年最初の試合を、復帰の一つのプロセスにしていたのかもしれない。第一段階は11月のYMITでのホームゲーム。第二段階は1月のウカルちゃんでのホームゲーム。第一段階はまずはリリーフサーバー中心でとにかく出場させて肩慣らし。第二段階はいよいよ本格復帰に向けてアタックや前衛出場…。
実際、1月22日ので愛ドームでのNECレッドロケッツ戦では西川選手と入れ替わることで後衛に石川選手と黒後選手が並ぶ形になった。このためなのだろうか、わざわざ第三セットにヤナと石川のポジションを入れ替えてこのセットに臨んでいたほどだ。守備での石川選手の負担軽減。まだ攻撃面での貢献はできないが、彼女が存在感を徐々に発揮し始めた。