それからも試合にはたびたび出るようになるが、リリーフサーバーでの出場がメインで、たまに西川選手と入れ替わる形で後衛のローテーションに入るが、前衛に回ると交替する、という状態が続いた。つまり、攻撃面での彼女の出番がなかった。おそらくそれはまだ筋力が回復していないからだろう。ただ、後衛で出ていても得点を取るチャンスはある───そう、サーブだ。だから彼女はせめてサーブで得点を取ろうと集中していた気はした。それが実ったのは、その翌週の11月12日のCNAアリーナ★あきたでの日立Astemoリヴァーレ戦だった。
復帰は果たした。得点もした。彼女は限られた出番の中でも、必死に自分の役割を全うしようとしているように見えた。また、控え選手としてテクニカルタイムアウトではコートに立つ選手に声をかけたり、リラックスさせたりする光景も目に付いた。それは昨シーズンまでいた白井選手の姿と重なった。
だが…
見ていて気になったのが…彼女がプレー中はおろか、だんだん練習中でもマスクをつけることが増えたことだった(ちなみに東レは昨シーズンからリーグ戦においては、試合中にマスクをつけながらプレーした選手はいない)。
傍から見ていてそれは、どこか、周りの目を拒絶しているように思えた。五輪で表情や容姿を批判されたことを気にしているからマスクをつけっぱなしにしているのかもしれない。私のようにカメラを向けている人───つまり表情や容姿を撮っているということだ───に対しての嫌悪感もあったのかもしれない。好奇の目にさらされることを嫌がっているのかも…私も含めて嫌な思いをさせているのかも…。
一方で、チームに対してもどこか線を引いている気がした。私は前衛には入らない、リリーフサーバーでいい、石川選手たちを励ましたり、みんなをリラックスさせる存在でいい。
今のままでいい…。
もちろんそれは、精神面でのつらさを抱えた自分を守るという意味もあるのだろう。なので、見ていてちょっと辛くなる部分があった。
彼女はこのままで今シーズンを送ってしまうのではないか…。
復帰で終わってしまうのではないか…。
もう、かつての彼女の姿は望むべくもないのだろうか…。
彼女の心に火をつける方法はないものだろうか。何か、火がつけば、きっかけがあれば彼女はメラメラと燃える気はした。だが、濡れた紙に火をつけたところでしかたないのではないか…。そんな虚しさすら感じていた。
投票で選出されたオールスターでマスクを外して楽しそうにしている彼女の様子をTL上で見るたびに、これはあくまでオールスターだからであって、チームに戻ればまたいつもの姿に戻ってしまうのかな…。そんな懸念で2022年は幕を閉じた。