黒後愛復活プロジェクト、第三段階。

東レアローズ滋賀
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

あの日。試合前に整列するときから、彼女は違っていた。おっ、これは…。その変化に気付いた人は、私以外にもけっこういたことを後で知った。そうか、みんな、やっぱり彼女のことをずっと見ていたんだな。

2021/22シーズン。リーグ戦を2位で通過しながらファイナル3で久光に敗れた東レアローズ。それは東レにとって、黒後愛がいなかったシーズン、でもあった。開幕前に突如発表された、体調不良による離脱。まあ体調不良ならそのうち戻ってくるだろう。そう思っていたが、その後チームからは黒後愛の「く」の字も聞こえてこなかった。彼女について語る人は他チーム含め誰もおらず、文字通り消息不明だった。

ファンの人によればインスタにたまに浮上することはあったそうなので、生きていることだけは確認できていた。いや、何を大げさなと思うだろうが、東レファンの私からすれば本当にそうだったのだ。

年明けになったら戻ってくるのでは…。または1月末のウカルちゃんアリーナでのホームゲームからでは…。シーズン中に復帰するならこのタイミング、というポイントはいくつかあったが、それらを過ぎても彼女が一向に姿を見せないと、もうこれは今シーズンでの復帰はないな、とあきらめざるを得なかった。一方チームは、彼女が抜けてもその穴を埋めようと選手たちが奮起し、意外といっては何だが、首位争いを繰り広げていた。

それがせめてもの救いだった一方で、「私がいなくても大丈夫じゃん」と、彼女に自分の居場所がないと感じてもらいたくないなとも思っていた。仮にもし東レが優勝しても、うれしかっただろうけど、一方で彼女の復帰への意欲をそいでしまうことも危惧していた。幸いというか、それは完全な杞憂に終わったんだけど。

リーグ戦が終わり、そしてラストチャンスと思っていた黒鷲旗も姿を見せず、彼女の2021/22シーズンはまさかの出場ゼロに終わった。出場どころか消息すら聞こえてこなかったシーズンになってしまった。空白のシーズンになってしまった。

決して長くはないバレーボール選手にとって、一年の空白期間は長く、何より痛い。事実、黒後選手の下北沢成徳時代の同期だった堀江選手(20/21)、山口選手(21/22)は既に引退している。このまま引退してしまうのでは…そんなことも危惧していた。だから、基本的に5月末に発表されるチームの退団選手のアナウンスが怖かった。それは、最悪のシナリオだった。

だが、事態は好転する。退団発表に彼女の名前はなく、そして6月に彼女がインスタを更新、チームに合流したことを明かした。やっと彼女の消息がつかめた。それが何よりうれしかった。そして7月にはチームが行ったインスタライブに出演して、久しぶりの動く彼女の姿が見られた。彼女が登場すると、いつもは2~300人くらいの閲覧者が一気に1600人になった。つまり、東レファンに限らず、いろんな人が彼女の様子を見たかったということ。やはり、彼女は注目の存在なのだと痛感した。

彼女は戻ってきた。

一年間のブランクがあったとはいえ、ボールくらい触っていただろう、実はシーズン中もチームには合流していて、練習はしていたんじゃないか。なので比較的早く元のプレーが見られるはずだ───。そんな一方的な期待は、公式戦としての復帰戦となった9月の近畿総合と10月のとちぎ国体であっさり打ち砕かれた。両大会ともスタメンではなく、途中交代で後衛に入るのみ。練習を見ていてもまだアタックを打てるような状態ではない、とファンはすぐ気づいたという(私は行っていない)。

復活には程遠いが、何より彼女の地元で開催された国体で復帰してくれたことをありがたいと思わなければ…そう思い直した。