青猫の名前~PFUブルーキャッツが紡ぐ再生の物語~

PFUブルーキャッツ
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③「キャプテン・宇田沙織」

このテーマだけでブログが書けるのでここでは多くは書かないが、にしても間違いなくこの要素は大きい。

※追記:その後本当に書きました

個人的には、宇田選手がキャプテンと知ったときはちょっと驚いた。あくまでも私の中で、だが、キャプテンというのは強いリーダーシップで引っ張っていく、家族で言えば長女タイプだと思っている。これもあくまで私の中、では宇田選手は次女というか末っ子タイプなので、キャプテンと聞いてびっくりした(ご本人も選手名鑑「チームの顔」の中で「みんなの前に立っていくというタイプではない」と言っている)。

ただ、昨シーズンのキャプテンが清水選手だったと後で知って、ああ、こういう「盛り上げる人」がPFUのキャプテンの系譜なのかなあとも思った。

昨シーズン一勝もできなかったチーム、という暗い雰囲気を払拭するには、宇田選手のようなキャラの人がキャプテンになるのがもっともふさわしかったのでは、と思う。個人的には坂本監督の指名なんじゃないかなあと思うくらいだ。

ただ、一連の変化を「PFU再生プロジェクト」とするのなら、宇田選手のキャプテン起用もそれに沿ったものだ、というのが見えてくる気がする。このチームを変える。立て直す。そのためにはこういう監督を呼んでこういう選手を連れてきて、キャプテンにはこういう人(仮に、チームに笑顔をもたらす存在とする)を起用する───

少し関係ないかもしれないけれど、個人的には津賀選手のこのツイートが一つ象徴しているのではと思う。

「1日1回は大笑いする」

それが津賀選手だけでなくチームとしての何よりの方針だったのかなとも思う。

そう考えるとやっぱりキャプテンには宇田選手しかいない、ということになるなあと。

今季のPFUを見ていて、当然劣勢の試合が多かったんだけど(でも4勝のうち3勝は見ているんだけど)、そんな中でも必死でチームを鼓舞する宇田キャプテンの姿は見ていて本当にじんわり来た。個人的には10月のYMITでは声が聞こえるくらいの近くの席で、あるやりとりを見てちょっとつらそうだな、という光景も見ていたのでなおさらだった。

それを見ていたからこそ、久しぶりに見た五所川原はチームの雰囲気も変わっていて、宇田選手も元気になっていたのが印象的だった。キャプテンとしての重圧をもしかしたら乗り越えて、あの五所川原での二連勝があったのかなとも思った。

ちなみに個人的にはあの五所川原とその翌週の金沢のPFUの雰囲気は非常によかった。首位を快走するデンソーをフルセットにまで持ち込んでいたのが、もしかしたら今季のハイライトだったのかもしれない。そしてもっと言うとあの試合に勝っていたら私は泣いていたかもしれない(今まで見たバレーボールの試合で、東レ含めて泣いたことはない)。それくらい、本当にいい雰囲気だった。このチームなら勝ってもおかしくない、そういう雰囲気だった。

話を戻すと、宇田選手は相手のサーブミスとかで「ラッキークッキー、はいクッキー」とか歌っていたり(これは今季からのような気がする)、12月末のKUROBE戦ではKUROBEのホームゲームということで会場のDJによる「アクア!アクア!」コールが響き渡る中、それに合わせて「PFU!PFU!」と叫んでいたり。

こう言ったら(何もわかってないくせにと)怒られるかもしれないけれど、

「ああ、キャプテンになってきたなあ…」

と。これは何も彼女に限らず久光の石井選手もそうなんだけれど、キャプテンになったことでその選手がどう変わっていくのか、成長していくか、というのを見るのはとても面白いのだ(しかも石井選手をキャプテンにしたのは、東京五輪を控えて選手としてもう一皮むけさせるため、というのが酒井監督の方針だったとどこかで読んだ)。

キャプテン・宇田沙織の存在が、PFUを変えていった要素の一つであることは間違いない。(あったとすれば、だが)暗いムードを「払拭」するには彼女ほどの適任はいなかったと思う。

そして最後はやっぱりこれだと思う。