青猫の名前~PFUブルーキャッツが紡ぐ再生の物語~

PFUブルーキャッツ
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

そんなPFUが、今年のレギュラーシーズンは5位とはいえ、4勝をあげた。中でもサブホーム・五所川原大会であげた日立戦の勝利は、フルセットにもつれ込む熱戦になりながらも、地元の五所川原市民の後押しを受けて勝ち取ったかけがえのない一勝だった(結果サブホームの五所川原で姫路と日立から二勝をあげた)。特にこの五所川原大会から三週連続で六試合も一気に見たんだけれど、10月の埼玉、そして翌週の草津と勝利に恵まれず苦しんでいた序盤戦を見ていた身としては、チームが明らかに好転していると感じた。

そして、何より何より、撮っていて楽しいチームだった。ファインダー越しに、いい光景がたくさん見られて、だんだんのめり込んでいった。

そんな、今季のPFUブルーキャッツの流れている空気、は、個人的には以下の4つの要素が大きかったと思う。

①4人の加入選手

まず大きかったのは筒井選手だと思う。リベロとしての能力もさることながら、常勝軍団の久光に長くいたこと、そして日本代表や海外への移籍経験もあるなど、とにかく「豊富な経験」を注入した存在だと思う。ポジションも相まって、PFUの「土台」を安定させたのは大きかったと思う。

そして和才選手。お隣・KUROBEからの移籍といういわば禁断の移籍だったわけだが(サッカーだとこういう言い方をよくする)、何より印象的だったのは、一度退団と発表されながら移籍希望に切り替わったことだ。

ということは、つまり、当初は退団してそのまま引退するつもりだったけれど、PFUからオファーが来て翻意した、ということと推測できる。ではなぜそこまでして和才選手を獲ったのか。

これはそこまでバレーボールに詳しくない素人の考えとして了承いただきたいのだが、

19/20シーズンのPFUのサーブレシーブ成功率は前年の49.9から56.1に上昇している。これは実はスターカンファレンスではJT(60.5)、東レ(57.3)に次ぐ3位である。和才選手自身の成績は57.7でカンファレンスでは9位と高くはないが、PFUの中では一位だ。一方で和才選手の抜けたKUROBEは59.9から49.8と大きく落としている。

しかも和才選手は昨シーズンの、V1全チームで4位。サーブレシーブ成功率をアップさせるという明確な立て直し策があったから、オファーしたということではないだろうか。

まず守備の安定。チームの土台をまず立て直すための二人の加入、というのが見えてくる。守備が安定しているから攻撃に専念できる。そんな好循環を生み出そうとしたのだろう。

そして残るは合屋選手と園田選手。この二人は、岡山の内定選手として一度は発表されたのに、突然それぞれ退団と移籍希望に切り替わってバレーボールファンを驚かせた。実態はどうかわからないが、引き抜きと言って差し支えないだろう。選手、というか親族にとっても親会社を持たない岡山よりは、社員としてその後の道も保証されている(はず)といってもいいPFUがいい、という考えもあるだろう(どっちがいい、悪いではなくご本人の判断だ)。

ただ、一つだけ言えるのは「そこまでするか」ということであり、これはいわばPFUの本気度を表すもの、として捉えることはできるだろう。

※新加入はもう一人タイのタナッチャ選手がいるが、上述の4選手ほどチームを変えた存在とは言い難いのでここでは触れない。ただ、毎年必ずアジア枠でタイの選手を獲り続けているのはいい方針だなあと(当然獲得費用もかかるし、言葉の問題でチーム全体として受け入れるということも必要になるので)。