二年、そして一年越しの、ある彼女の凱旋

日立Astemoリヴァーレ
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

それからほぼ一年後の2022年11月12日。再び秋田で試合が開催された。対戦相手は推しのチームだったので、当然のように駆け付けた。もちろん、推しのチームには勝ってほしい。だけれども、あの涙を見た身としては、彼女の再リベンジも見てみたい。そう思っていた。

観客数制限もなくなった会場は、男子共催ということもあって一年前と違ってにぎわっていた。そしてまた、このシーズンから初めて導入されたホームゲームDJが会場を大いに盛り上げていた。その中で、もちろん彼女の紹介もあった。いわく彼女が子供の頃、バレーボーラーとして第一歩を踏み出したのもこのCNA★アリーナなんだという。ここは地元中の地元なのだ。

また、「初めての秋田での試合だった二年前は無観客、去年は負傷で…(その分今年に賭ける)」というアナウンスも丁寧に入れていた。そして、会場に来ていた出身校の生徒たちにも呼び掛けていて、それに対して彼女たちは持ってきた自作の応援グッズで応えていた。さすがホームゲームだな、と思った。

だが。彼女はスタメンではなかった。昨シーズン終盤で見たときはスタメンで、レギュラーをつかみかけていたような気はしていたが、今シーズンは開幕からスタメンは一度もなく、二枚替えなどの出場が中心。代表にも選出された選手がレギュラー争いで立ちはだかり、その座をつかめてはいなかったのだ。

試合は、土日共に0-3と、いいところなく敗れた。彼女の出番もあったけれど、何より圧倒的なスコアの前にかき消されてしまった。もちろん推しのチームが勝ったことはうれしかったけれど、気の毒にも思った。最初の凱旋は無観客、二度目は負傷、今回こそは…のはずだったのに。

敗れた日曜の試合後、彼女は地元の人たちが多く駆け付けている二階スタンドに向けて挨拶した。なぜかベンチ裏の席を買っていたので、その姿は背中しか見えなかったのだが、その後の選手たちのリアクションを見ると、少し涙ぐんでいたようだ。もしかして泣いてる?と、どこか笑いながら話しかけているのがこのチームのよさなのだとつくづく思った。

ファンサービスとして行われる場内一周を笑顔で終えて、ベンチに戻ってくると、彼女はまるでスイッチが切れたように笑顔がフッと消えた。それを見て、ファンの前では笑顔を装っていたけれど、やっぱり悔しかったんだろうなと思った。

一年前のあの日から、彼女のその後の一年を見届けようと秋田にやってきたけれど、それは来年に持ち越しになったんだなと思った。きっと来年は咲き誇った彼女の盛大な凱旋試合になる。凱旋というのは、いわば節目として、選手を成長させる糧になるはずだから。

そしてまた、一年後こそ彼女の咲き誇った姿をここで見届けたいなと思った。そう、この秋から出荷が始まった、地元・秋田米の新ブランド「サキホコレ」のように。