二年、そして一年越しの、ある彼女の凱旋

日立Astemoリヴァーレ
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

日曜の試合が終わり、試合後の挨拶を行っていた時。相対する形でいたある選手の目に、みるみる涙が浮かんでいくのがファインダー越しにわかった。気づけば、こちらもついもらい泣きしていた。

一年前の2021年10月31日、秋田県秋田市・CNA★アリーナ。Bリーグの秋田ノーザンハピネッツやJリーグのブラウブリッツ秋田などスポーツで盛り上がるこの街を一度は訪れてみたく、推しのチームの試合でもないのに駆け付けた、Vリーグ秋田大会。もちろん、秋田市出身の彼女にとってはそれが凱旋試合だということは知っていた。

凱旋試合───
そう書くとちょっとオーバーかもしれないが、要は「故郷に錦を飾る」試合。地元なので、友達がたくさんいる。親や親戚に加え、恩師など出身校の関係者も、そして何より後輩も駆けつける。そんな人たちの前で成長した姿を見せたい、活躍する姿を見せたい、とは誰だって思うはずだ。

だからそれが対戦相手であろうと、凱旋試合には心から拍手を送りたいと思う。実際、試合前のアナウンスで対戦相手にも地元出身選手がいてその旨がアナウンスされると、敵味方関係なく会場が拍手で包まれる。そういうことだ。

だが、試合前のウォーミングアップでの彼女はどこか浮かない顔をしていた。聞けば、負傷明けなのだという。本調子ではない中、この試合を迎えてしまったということだ。

本来、凱旋試合はその一年前の2020年12月だった。ところがこの日付でお察しの通り、無観客試合となってしまい、せっかくスタメンで出場して勝利も挙げた試合を、地元の人たちに見せることができなかった。そのリベンジ、だったはずなのに。どこか浮かない顔でウォーミングアップをしている彼女を見て、そんな無念さがどこか感じられた。

結局試合はリリーフサーバーでの出場に限られたが、土日共に出場し、50%制限ながら有観客で行われたCNA★アリーナは大きな拍手に包まれた。だが、試合は0-3、1-3とデンソー相手に連敗を喫した。冒頭の出来事は、日曜の試合後のことだった。

彼女の正面の二階席には、母校の生徒も来ていた。そんな人たちを目の当たりにしてうれしさ、そして悔しさがこみあげてきたのだろう。そう思った。でも、きっと彼女はこの悔しさを糧に頑張るだろうし、一年後、試合後の整列では活躍して地元に人達に胸を張る姿が見られるだろう。そんな姿をまた見てみたい。そう思って秋田を後にした。