全方位型岡山シーガルズ

岡山シーガルズ
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

かつて岡山のホームゲームを見に、ジップアリーナに行ったときのことだ。一階のアリーナ席で見ていたんだけれど、チアの人が一階の通路にも来て盛り上げていたのが印象的だった。まあこれはまだホームゲームだからわかるんだけれど、ファイナルでもこういう風に積極的に全方位に呼びかけるんだな…と思った。

そして個人的に岡山と言えば、バルーン配り、だ。これはファイナル8のサイデン化学アリーナでのことだったんだけれど、一階のアリーナ席に座っていたら、応援団長が自ら「バルーンいかがですか?」と配り歩いていてびっくりした。団長自ら!!??

ファイナルも一階のアリーナ席で見ていたら、チアの人がバルーンを配り歩いていた。しかも一度来ておしまい、ではなく何回か巡回していた。一度来ただけだともらい損ねてしまう人もある。「あ、もらっておけばよかったな」と思う人もいる。それを見越しているのか、何回か巡回していた。一回目よりも二回目の方が、手に取る人は多かった。チア=女性が配っているのもあるのか、子供がもらいに行くシーンもあった。

こうして、団席以外にも岡山を応援する人、を文字通り地道に増やしていっていた。

ファイナルの代々木第一体育館は、岡山を応援していた人の方が多かったと思う。

そういう地道な努力は、何もファイナル一日限りの岡山ファン、ではなく、これからもファンになってくれる人を増やしているのではないだろうか。だって、あんな試合見たらなおさらだ。

そしてこれは1月の岡崎で撮った写真なんだけれど、試合後に選手たちにエールを送る応援団長の隣に、子供達が一緒に立って写っていた。団長の隣に子供がいる、という光景はこれまで団席も撮ってきた中で初めて見る光景で、これも岡山らしいなと思った。

年齢、性別、地域、座席位置、チームへの関心度…

私たちを分けるものはいくつもあるけれど、岡山は全てに対して向けようとしている。「どうぞ、私たちを好きになってください」と呼びかけている。そんな感じだ。

優勝チームの表彰セレモニーが終わり、コート上がJTの選手たちの歓喜にまだ包まれている中、帰ろうとすると舞台裏でささやかに岡山のセレモニーが、ひっそりと行われていた。そこではこの試合が最後となる応援団長やチアと選手、監督達が笑顔で記念撮影に収まっていた。

そのひっそりさ、ささやかさが印象に残った。何より岡山らしいなと思った。

勝者の後ろには必ず敗者がいる。

でもその敗者が輝けるものがあるのだとしたら、

自分たちを貫いて

自分たちの証を見せ、示して

人の心に刻ませ

そして、残させる

試合後のことだ。

セレモニーで岡山の選手が登場すると、団席に掲げられた岡山の団旗が、ひらひらとたなびいた。照明が落とされ、スポットライトがコートにいる選手たちを照らす中でたなびくその旗はとても幻想的だった。

それは、どこか、静かに舞うかもめを思い起こさせた。

それまでコートで行われていた熱戦を知るよしもなく、静かに舞っていた。

試合には負けたけれど、私たちの誇る岡山という証、を何よりこの場に残せた。

かもめは準優勝という新しき風をまとい、静かに、そしてひらひらと、空を突き進んでいた。

岡山については一年前こんなことも書いています。宜しければ。