全方位型岡山シーガルズ

岡山シーガルズ
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

あの日の代々木第一体育館は、岡山を応援していた人の方が多かったと思う。

2020年1月26日、VリーグV1女子ファイナル、JTマーヴェラス対岡山シーガルズ。

それまでチームの核として機能していたミハイロヴィッチ選手の代わりにアメリカ代表の新外国人選手、アンドレア・ドルーズを獲った前者と後者。ドルーズはあっという間にチームの核となりスターカンファレンスで優勝した前者と、プレミアカンファレンスで二位につけた後者。

いや、岡山だって当然レベルアップしたわけなんだけれど、パワフルな新外国人選手の加入というわかりやすいJT(もちろんそれだけではないのだが)に比べてみれば、なぜ二位になったのかがわかりづらい。ものすごく雑な言い方をすれば「全員バレーで勝ち上がってきた」なんだけれど、それはあまりに雑すぎると思う。

ある意味で対比のしやすい二チームによるファイナルになった。

そして日本人はたいてい「スター選手要する強いチーム相手に全員で挑む」という構図が大好きだ。そんな意味で、ファイナルで岡山に肩入れして見ていた人は多かったはずだ。それだけではなかったけれどその話は後ほど。

私自身は今シーズン42試合見た中で岡山は4試合。しかも初めて見たのは1月の岡崎と、経過を全く追えていなかったチームだった。「いつもの岡山らしく泥臭くボールを拾って勝ってきて二位になったんだろう」という想像しかなかった。ファイナルは、JTが勝つとしたらストレート。岡山が勝つとしたらフルセットかな。でもJTだろうな。そう思って私は代々木に向かった。

第一セットをJTが取って、ああ、これはJTだな。そう思った。第二セットは岡山がリードしてJTが追い上げて、ああ追いつけるな、これで追いついてこのセット取ったらもう一気にJTだな、というところで、それは選手もそう感じたのかはわからないけれど意識したのかサーブミスが続いて流れを切ってしまい、第二セットは岡山。そして第三セットも連取して岡山がリードする展開になった。

試合を見ていて感じたのは、JTが岡山のペースに飲み込まれている、ということだった。いつの間にかJTが、岡山のバレーを強いられていた、という感じだろうか。ドルーズはじめ強力攻撃陣(という一言で片付けられないのは百も承知だが)が火を噴くはずが、いつの間にかボールを拾うバレーにJTが持ち込まれていた。

1月という短期で4試合見た中での岡山のバレーというのは、ボールがコートにどう落ちるか、までをシミュレーションしているかのようなバレー、だった。パワーで相手のブロッカーの手を弾いて…ではなく、ブロッカーの指にどう当てればコートのどの位置に落ちるか、までを考えられたバレー。実際にそんな高度なことはできないかもしれないけれど、そう思わせるバレーだった。

第三セットになると、岡山の放ったスパイクが、JT側の空いたスペースに飛ぶことが多く、結果選手が拾おうと走らされている…消耗させられている…