JT「二年越しのミッション」笑顔、涙、そして涙

大阪マーヴェラス
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

試合後。

歓喜の胴上げが続く中、選手インタビューが行われた。何人か後に登場したのは小川杏奈選手だった。個人的な話だが、推しの選手のお姉さんということでJT戦ではそれなりに注目していた選手だった。それなりに注目していたから、昨年のファイナル3では一度もコートに立っていなかったことも覚えていた(ちなみに今調べたら二年前のファイナルでもコートには立っていない)。

今季はコートにいる時間も増え、セミファイナルではフル出場、ファイナルの舞台でもスターティングラインナップに名を連ねたが、試合途中で交代し、優勝の瞬間をコートで迎えることはできなかった。

コートで見ていて、こう言っちゃ何だがちょっとおっかない選手だとは思っていた。実は妹である推しの選手もああ見えて(笑)負けん気の強い選手だそうなのだが、この負けん気の強さは姉譲りなのだと思うくらい、試合中間近に見るお姉さんはちょっとおっかなかった。

これを書いている時点で残念ながらDAZNでの配信が終了してしまったので、細かいやりとりを再現できないのだけれど、試合後のインタビューで、矢田部さんが今日の試合を振り返って、というコメントを求めた。

優勝はした。後ろでは歓喜の中、選手たちの胴上げが続いている。自身は入団したシーズンに降格を経験し、昇格、そして優勝、と、JTが復活していくその一員としてチームにいた。

でも、自分はコートに立てなかった、のではなく、最後までコートに立てなかった。

そりゃ、あのお姉さんの性格だったら…

と思ったら、「チームは優勝したのですが」の後に「最後までコートに立てなくて」と、急に涙で声を詰まらせた。

その涙は私の心に深く刺さった。

でも、その後、こうしてチームが優勝できたことが何よりです、と、最後は笑顔で締めくくった。

あの場で声を詰まらせて泣いたこと。これも、小幡選手同様、自らに刻んだ傷、だったのかもしれない。見ていて下さい。やってやるから。

でも。シーズン中主力選手としてチームを牽引し、ファイナルの舞台に導いた立役者の一人だったことには何ら変わりはない。最後まで立てなかったけれど、コートに導いたのだ。

インタビューを終え歓喜の輪に戻る彼女を、JTの私設応援団が、ある人気漫画をモチーフにした彼女のゲーフラになぞらえて、こう叫んでいた。

「アンナ!アンナ!大成功!」