結果は、真逆だった。ミハイロヴィッチの活躍ぶりは確かに欠かせなかったけれど、大黒柱であるが故に彼女に合わせたバレー───滞空時間の長い高いトスを上げる───になっていたり、彼女の機嫌に大きく左右されたり、「チームとしてのコントロール」が非常に難しくなっている印象を受けていたのだが、だからこそ契約を更新せず、JTの良さが活かせるバレーから逆算してぴったりだと思ったドルーズを獲った。
逆算しているからこそチームのなじむのも早く、あっという間に戦力になった…そんな感じだった。優勝のためのJTのミッションは次々とクリアされていった。そんなシーズンだったのではと思う。
なーんて書けるのはこの記事のおかげなんだけれど(米虫さんは本当にいいライターさんだ)。
ミッションクリアという点では、今にして思えば東レ戦もそうだったのかなと思う。ファイナル3で敗れた東レに勝てないとファイナルには進めない。よくよく考えたらそんな怨念があったのではと思うくらいの対戦成績(三戦全てフルセットで2勝1敗)だった。
こうして迎えたファイナルの舞台。第一セットは取るも第二、第三と落として岡山のペースになるも、第四では取り戻して試合はフルセットにもつれ込んだ。そのとき、JTのベンチが目の前だったんだけれど、なにより笑顔にあふれていたのが印象的だった。
「大丈夫だよここまで来たんだから」
「泣いても笑ってもこれが最後のセットなんだから」
そんな思いによる笑顔、だったと思うんだけれど、何より吉原監督が笑顔で語りかけていたのが印象的だった。こういう舞台で笑顔でいられる余裕があるのだから、これはもうJTだな、そう思って見ていた。
でも、何も彼女たちはただ笑うために笑っていたのではなかった、と思う。自然と笑みがこぼれていたのだ、と。ではなぜ自然とこぼれていたのか。
悔しさがあったから、だ。悔しさがあると言うことは、一方で同じような状況を経験していた、ということだ。二年前のあのときもファイナルで一セットも取れず苦しい展開だった。過去に私たちはそういう状況を経験しているじゃないか!
同じことになるんじゃないか、という不安より、「あのときの経験があるからいける!」という気持ちが何より勝っていたのではと思う。ああ、悔しさは必ず糧になるんだな…
フルセット前に笑顔にあふれている彼女たちの表情を見てつくづくそう思った。
でも、笑顔にあふれていたのはそれだけが理由ではなかったと思う。
ファイナル8のサイデン化学アリーナでの久光戦を、現地で見ていて後からDAZNで見たときのことだ。
第一セットを取られて第二セットを取り返した後の確か第三セットだったと思うけれど、最初のTOで小幡選手がこんなことを言っていた。
「16点までに3~4点開かせたい」
そう、明確な数値目標まで設定していたのだ。そして実際は16-11となって、目標以上の数字を達成した。こうなるとチームにも達成感が出てくるし、これならいける、という雰囲気にもなる。
勝利のためのミッションを設定し、それをクリアしていくことで自信をつけていく…
それはキャプテンというよりはCEO(最高経営責任者)の姿だった。
でもそのミッションは、全ては優勝のためのミッションだったのだ。試合で小幡選手を撮っていて、ところどころガッツポーズが見られたんだけれど、それは個人的な歓喜、というよりはチームとしてのミッションクリア、そんな感じのガッツポーズだった。
大丈夫、優勝のためのミッションは次々とクリアしている。そんな思いからの笑顔だったのかなと思った。