PFUにもたらした「キャプテン・宇田沙織」というピース

PFUブルーキャッツ
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あと、相手のサーブミス等でラッキーな形で得点が入ると控えエリアの選手たちと「ラッキークッキー、はいクッキー!」と歌いだしたり(これはおそらく今季からだ)。彼女は控えエリアにいる時間の方が多いんだけれど、控えエリアをとにかく盛り上げていた。もっとも彼女はそれまでも控えエリアにいることが多くて昨季も盛り上げていたんだけれど、今年はキャプテンとしてさらに盛り上げた、というところか。

あと、これは途中から気づいたんだけれど、相手チームがTOを取ると真っ先に飛び出していって、ベンチに戻ってくる津賀選手とジャンプでハイタッチする、なんて光景も。ちなみにTOの笛が鳴った、というよりはなることを予測して飛び出してくるので、撮るのは結構大変だったりする(笑)。これは数少ない快心のショットだ。

他にも、年末の黒部大会ではDJが「アクア!アクア!」とコールして会場を盛り上げているのに合わせて「PFU!PFU!」と叫んだり、金沢大会では主審に対してボールのコートインをアピールしたり…

数々のチームを鼓舞する姿、は、見ていて本当に胸が熱くなった。小さな背中が頼もしく見えた、そんなところだろうか。

こうしてキャプテン・宇田沙織の数々のシーンを見る中で思ったのは、チームに「明るさ」をもたらすためのキャプテン起用だったのでは…と思った。繰り返すようで申し訳ないけれど昨季0勝のチームを立ち直らせるために、というよりは払拭するために、明るく盛り上げる。昨季降ったのが大雨とすれば、今季は抜けるような青空でカラッとさせる。雨の後の晴れなら虹も出る。

誰が彼女をキャプテンに任命しようと決めたかは定かではないけれど、でも個人的には坂本監督の意向だったんじゃないかな…と思う。なにせリベロに「お前も点数取っていいんだぞ」(チームの顔の宇田キャプテンの言葉より)と言っちゃうような人だ。TOで「とり野菜みそ」と言ったり選手たちを笑わせるような人だ。

チームを再生させるためにはまず明るさを植え付けることが必要…そう思ったのではないだろうか。だってどう考えたって0勝で終わるような戦力のチームではない。まずは選手たちに元気になってもらおう…

PFU再生というパズルがあるとするならば、キャプテン・宇田沙織というのは欠かせなかった、というよりは真っ先に思い浮かんだ。それくらいのピースだったのではないだろうか。

もっとも、宇田選手の前は清水選手がキャプテンだったので、周りを明るく笑わせる人、というのはもしかしたらPFUのキャプテンの系譜なのかもしれないが。

試合を重ねるたびに彼女が「キャプテン・宇田沙織」になっていき、その明るさが何よりチームを引き上げていった、0勝のチームをまずは4勝にまで引き上げた。

それが今季のPFUだったのではないだろうか(残念ながら入れ替え戦に回ることになりそうだが)。

そしてそれは、私のように他チームのファンも魅了した物語だった、と思う。

最後に。Vリーグはいつも試合が終わると選手たちが団席に挨拶に行くのだが、たいていは応援団のエールにお辞儀して答えるだけ。

でも宇田選手はいつも必ず大声で「応援ありがとうございました」と言って頭を下げる。

それはもしかしたら、彼女なりのキャプテンとしての矜持なのかもしれない。

今季のPFUについてはこんなことも書いています。宜しければ。