PFUにもたらした「キャプテン・宇田沙織」というピース

PFUブルーキャッツ
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たいていキャプテンの交替というのは、若返りを図るものだ。今季で言えば久光(岩坂→石井選手)、埼玉上尾(丸山→井上選手)、日立(佐藤→芳賀選手)だったり。NECは柳田選手から年上の山内選手になっているけれど高卒と大卒の違いで入団年数なら山内選手は後輩だ。

その点PFUは清水選手から入団年数も一緒の同学年の宇田選手へのバトンタッチというのは個人的には異例に思えた。そういうのも重なっての、宇田選手キャプテン就任への驚きだった。性格についてはご本人も「みんなの前に立っていくというタイプではない」と「チームの顔」のキャプテン必勝宣言の中で述べているし、もしかしたら本人も驚いたかもしれない。

そんなキャプテン・宇田沙織が昨季0勝のチームをどう立て直していくのか。これは開幕前に個人的に注目していたポイントの一つだった。

シーズン序盤、10月の埼玉とYMITでPFUを一試合ずつ見たんだけれど、このときは選手たちとのやり取りなどを見ていて、キャプテンとして手探りな印象を受けた。開幕戦こそKUROBEとの北陸ダービーに勝利したけれど、そこからは連敗続き。そして、YMITは東レのホームゲームということでベンチ裏シートで見ていたんだけれど、試合後にスタッフとの会話が聞こえて(大した言葉ではないんだけれど)、ああ、ちょっとつらそうだな、と思っていた。本人から笑いは消えていないんだけれど、その笑いは苦笑だった、というところか。

チームは監督も替わり、移籍や新加入選手も増え、昨季0勝だったチームは再生の道を歩んでいた。だからこそその移行の苦しみとでもいおうか。それもあるし、キャプテンとして自分ができることなんだろう、もしかしたらそんなことを模索していた時期だったのかもしれない。これは別に彼女に限らず、キャプテンに就任したら誰しもがぶつかる壁だ。キャプテンとしてあるべき姿はどうなのか。自分はそれができているのか。簡単に言えばそういうことだ。

次にPFUを見たのは一ヶ月後の五所川原だった。

その後も連敗続きだったけど、このときチームの空気は明らかに変わっていた。キャプテン・宇田沙織はとても元気だった。連敗続きだったとはいえトヨタ車体、そして前週は岡山相手にフルセットにもつれ込むなど、チームとしての手応えがあったのかもしれない。結論から言えば今季からサブホームになった五所川原で姫路、日立相手に連勝し、さらにその翌週のホーム・金沢ではプレミアCの首位を快走するデンソー相手にフルセットに持ち込むなど、強くなっていた。

今のこのチームだったら強豪相手に勝ってもおかしくない、それこそ金沢の翌週の刈谷でJTに勝ったりするかも…なんてことも思ったのだが(結果はストレート負け)、でも年末の黒部大会ではホームで盛り上がるKUROBEをストレートで一蹴し、昨季0勝だったチームは偶然にもキャプテンの背番号と同じ4勝でシーズンを終えた。

今にして思えば、強くなっていたというよりはキャプテン・宇田沙織のPFUになっていた、という方が正しかったのかもしれない。何より彼女は元気だったし、チームを明るく鼓舞していて、それに選手たちが引っ張られて…と、ファインダー越しに見るPFUの光景が非常に良かった。

例えばこれは五所川原の一コマ。

そしてこれは翌々週の刈谷の光景。試合前の公式練習でサーブを打っていたとき、ボールが当たりそうになった和才選手が「キャッ」と叫ぶんだけれど、すかさず宇田選手が真似をしたら怒った和才選手からボールをぶつけられる、なんて光景もあった。

あと刈谷では坂本監督に呼ばれるも監督がそっちのけなのか「やっぱりいい」になってしまったのか、「あれー?私呼ばれたはずなんですけれど(笑)」みたいにおどけたり。