まず、皆さんは今回の7位というネーションズリーグの成果をどうお考えでしょうか。
私はミッションクリアだと思っています。点数なら85点ですかね。何といってもこれまでに述べた、予選で勝ちまくって世界ランキングを上げる、ができたからです。8連勝して5連敗して終わる、という結果も上述した、「ピークを前半に持って来て、飛ばすだけ飛ばそう」そのままでした。あと、負けた試合も2試合はフルセットなので少しでもポイントダウンを避けられたわけです(一方で勝ち試合でのフルセットは1試合だけというのもよかった)。
また、試合経験という点では、決勝ラウンドの相手がブラジルというのもよかったです。予選リーグはある程度流していたチームも、決勝ラウンドになれば本気モードになります。その対戦相手が、予選リーグでは当たっていなくて、かつ東京五輪銀メダルですからね。もっとも、そこそこいい勝負になった(1セット取りましたし、第1、2セットは日本が先行してデュースに持ち込んでいる)ので、ファンの間では悔しさが増してしまったかもしれませんが、その後のセルビア戦を見ていても、ブラジルは後半からペースを上げてくるチームなので。その後ファイナルまで進んだチームだということを考えれば、1-3という結果以上に価値のあった試合だったと思います。
ガビ選手擁するガチのブラジルとやれた、ということは世界選手権に向けて大きな成果だったと思います。ネーションズリーグはあくまで世界ランキングを上げるためのもので、そして世界選手権に向けた骨格作りという点では成果は大きかったと思います。
なお、世界を相手に戦うために今回眞鍋監督は5つの指標を掲げています。
1:サーブで、各大会で日本人選手が個人ランキング10位以内に6人が入る
「お茶の間を賑わせたデータバレーが再び!?“新・真鍋ジャパン”の秘策とは?「オールジャパン体制」で再びメダル獲得へ挑む」より
2:サーブレシーブで、各大会で日本人選手が個人ランキング10位以内に3人が入る
3:ディグ&アシストで、世界一になる
4:失点の少なさで、世界一になる
5:団結力
今回のネーションズリーグ、私は日本戦以外にも海外勢同士の試合を準決勝以降見てみたのですが(今回volleyballworld tvに入ったので)、例えばブラジル対イタリアを見た後に日本の試合を見ると、「小さっ」ってつい思っちゃったんですよね。体格差といいパワーの違いといい、男子対女子の試合を見ている感覚でした。
これは別にバレーボールに限らずサッカーなど他のスポーツでもそうで、「日本らしい戦い方」というのを常に追求している印象です。先日亡くなられたサッカーのオシム監督が言われていた「日本代表の日本化」がまさにそうですね。
海外勢同士の試合を見ていて感じた日本との違いはいくつもあって、例えばブロードがそんなに多くないんですよね。クイックが主流の印象を受けました(ますます男子ですね)。相手のブロックにまともに当たると弾かれるので少しでもかいくぐるように、ということでブロード重視なんですかね。ただ、今回のネーションズリーグでは通用してなかったです。
あと、5つの指標の1つにあげていたサーブの強化も、海外のチームは多少乱れてもパワーで押し込んでくるなと思ったので、エースを奪うくらいの強化が必要なのではとも思いましたし、ボールをことごとく拾っての粘りのバレーとか日本の持ち味みたいな印象がありますが、海外勢も身体能力が高い分、ボールをけっこう拾えるんですよね。
よく、相手がブロックの体勢に入る前に高速バレーで…とか言われますけれど、体勢が整ってなくても海外の体格なら止められるんですよね。なので速さの追求にも限界はある気がしました。要は慌ててやることにもなるわけですから、雑になりやすい。それが雑にならないためには高度なテクニックがいるわけです。まあこの辺りは日本人は得意だとは思いますが、とにかく慌てないこと。つまりコンビネーションの成熟ですよね。
そんな中で日本が海外勢に対抗する一つのキーワードは、引きずり込むということなのかなと。海外のスポーツ選手たちは気持ちが切れやすい印象は受けます。最近Vリーグに来る外国人選手はそういう選手があまりいませんけれど、少し前にJTにいたミハイロヴィッチはまさにそういうタイプでしたよね。
要はイライラして力任せにアタックを打ってくれればこっちのもの、というわけです。そうして相手を自分たちのペースに引きずり込む。
Vリーグでも、特に岡山でよく見られるんですよね。相手チームを、自分たちの得意な拾ってつなぐ粘りのバレーに引きずり込む、というのを。それと同じことが、世界と戦う中で必要では、と。一度岡山をそのまま代表にして海外のチームと対戦させたいくらいです。
※ちなみに、東京五輪ではドミニカが岡山で事前合宿をして、岡山と試合をしているのですが、結果的に仮想日本代表としては最適だったのかな…と(日本に勝ちましたからね)。
いろいろ考えることが多くなってしまいますが、それは一方で頭が一杯になってしまう、オーバーフローになってしまう部分もあります。もし、あなたの仕事を、隣に常に上司が見ていて随時あれこれ指摘されたら嫌ですよね。頭が回らなくなりますよね。それと同じです。自分で自分の首を絞めるということになるわけですが、それがまさに準々決勝のブラジル戦だったかなあと思います。
と思ったらまさにキャプテンの古賀選手がそんなコメントをしているんですよね。
リードしているからそんなに慌てることないのに…とも思ったのですが、なんか、ブラジルにわざとリードさせられているような不気味さはちょっとありました。リードしている気に全然ならなかったというか。まあ、どこか余裕がなかったですよね。自信のなさからくるものかなとも思いましたが、自信はこれからつけていけばいいですからね。
ちなみに「リードしているけれど、わざとリードさせられている感覚」は、昨シーズンのファイナル3のゴールデンセットで味わいました(泣)。なのである意味、身に覚えがあるんです。
いろいろなことを叩き込むのも大事だけれど、選手たちの個性を縛っていないかな、というのは気になりました。とはいえ、今はまだ叩き込む段階であって、これから徐々に、いちいち考えなくても直感でプレーする時間が増えるのかもしれませんね。
続いて肝心の選手編です。