ブレイクするー?眞鍋ジャパン【VNL2022編】

日本代表
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再登板となった眞鍋監督。私は第一期の頃は後半しか知らないのですが、その後いろいろな書籍などを呼んで、策士という印象をいだきました。最大化するのが得意かなと。

実は今回の眞鍋監督再登板の関係で、2013年に刊行された『日の丸女子バレー』が連載形式で公開されました。長いですが、それこそ東洋の魔女からロンドン五輪までの女子代表の歩みがよくわかるので、ぜひ読んでいただきたいです。

日の丸女子バレー 東洋の魔女から眞鍋ジャパンまで | 文春オンライン

ここにも書かれていますが、ロンドン五輪では直前になって背番号を入れ替えたり、しまいには全員同じ髪型に、ということまで提案してこれは選手に拒否されましたけれど(「髪型まで一緒だったら金メダルだった」と冗談話にしていますが 笑)、使える手は何でも使おう、という意味での最大化なんですよね。

最大化という点では、選手だけではなくOGも使う、という点もそうです。ということでこの話です。

「アントラージュ」に見る眞鍋ジャパンのメディア戦略

眞鍋さんはマスコミの使い方がうまいなあと思います。マスコミを利用して注目を集めさせるんですよね。特にうまいのが、キャッチコピーを創り出すことです。前回も「MB1」「ハイブリッド6」というコピーを使って、「それってどういうこと?」と興味を引かせたわけです。

では今回は、というと、そう、アントラージュです。

バレー女子代表の再建を担う「アントラージュ」 先輩指導、あこがれを力に(1/2ページ)
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アントラージュとはフランス語で取り巻きという意味だそうですが、ロンドン五輪銅メダリストのメンバーを中心としたいわばサポート集団ですね。

これには選手へのアドバイスなどのサポートだけでなく、二つの意味があると思います。

①注目度・知名度の活用

木村沙織さん、竹下佳江さんをはじめ、知名度の高い方々ばかりなんですよね。バレーボールにそれほど詳しくない人で、古賀選手を知っている人がどれくらいいるのか、はちょっと心許ないですが、木村沙織さんを知っている、という人は圧倒的に多いわけです。ちなみにインスタのフォロワー数も古賀選手は16.5万ですが、木村沙織さんは39.9万と倍以上です。

実際5月の日本代表発表会見では、木村沙織さんをはじめとしたアントラージュを取り上げたメディアも多かったですし、新旧キャプテン対談という形でテレビでも放送されました。

木村沙織×古賀紗理那 新旧・日本代表キャプテン対談「根に持ってない?」リオ五輪落選の裏話【バレー】 | TBS NEWS DIG
世界最強の16チームが集結するバレーボール、ネーションズリーグ。5年ぶりに復帰した眞鍋政義監督(58)が率いる女子日本代表は日本時間18日時点、7戦全勝と快進撃を見せている。2年後のパリオリンピックへ新たな…

個人的にも、このエピソードを知っている身としてはこの二人の組み合わせ、というのはグッとくるものがあります。

古賀紗理那、五輪落選からの復活。きっかけは木村沙織と仲間の言葉。(田中夕子)
優勝まであと1点。V・プレミアリーグ女子大会決勝、14-6とNECレッドロケッツが大きくリードして迎えた最終セット。サーバーは古賀紗理那。18歳で日本代表に入ったばかりの頃はサーブが苦手で「絶対チャンスにしかならないから、打つのが嫌なんです」

②選手への注目をそらす

①にも連動しますが、メディアの取り上げられ方が選手だけにならないんですよね。例えばアントラージュの方々が指導に訪れると、そっちに注目が集まります。つまり選手への負担も減るということです。注目が集まるのが苦手な選手もいますからね(古賀選手もその類かと)。

③活動の機会を増やす

アントラージュは何も代表だけのアントラージュ、でもないわけです。バレーボール界のアントラージュとも言えます。というのも、アントラージュとしていわばプロジェクトが結成されたことで、再び脚光を浴びる形になったわけですよね。なのでこれはロンドン五輪銅メダリストというブランドを今一度活用しよう、という部分もあります。せっかくのブランドなのだからもっと生かさないと。そういうことです。

簡単に言えば彼女たちに仕事が増えるわけですよね。肩書が加わるわけですから。また、アントラージュとして組織化されたことでメンバーたちが定期的に集まって、いわば同窓会のようになるでしょうし。そんなメリットもあるかと思います。

まだ10年前のロンドン五輪のメンバーに頼るのか。そう思うかもしれません。でも、パリ五輪のメンバーがアントラージュを受け継ぐかもしれませんよ?

眞鍋さんにとってもアントラージュは心強いでしょうね。ネーションズリーグのフィリピンラウンドでは生中継だったのでスタジオとの掛け合いもありましたが、前の試合の解説で、体調不良で中座した迫田さんを、次の試合での解説のときに「試合がつまらないからと、途中で帰ったと聞きましたけど」とからかってましたから(笑)。選手に直接聞けないことをアントラージュのメンバーに聞くとか、そういうこともできるでしょうしね。

肝心の采配の方は、思うところもありますが、上述した通りミッションをクリアしたことが何よりだったのではと思います。個人的にはVリーグの現場を肌で感じている(対戦した選手もいるわけですから)川北さんがコーチで入っているのは心強いですね。特徴をわかっているわけですからね。

でもこの最大化、というのは、世界を相手に戦う点では必要だと思います。ここからはそんなネーションズリーグでの日本の成果について考えます。