新チーム続々誕生。地域リーグという「受け皿」に見るVリーグの未来図

地域リーグ
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~本気の地域おこし~
カノアラウレアーズ福岡(福岡県福智町)

設立:2021年
運営:一般社団法人Ichijo
監督:森田亜貴斗
選手:9人
公式サイト:https://www.kanoa-vb.com/

元々は2018年に福岡春日シーキャッツとして結成されたチームで、Vリーグ参入を目指してクラウドファンディングなどもやっていましたが、2021年に突然KANOA福岡へのチーム名変更と選手全員の退団が発表されました。

実は私自身福岡市は思い入れのある街で、福岡市ではないですが隣の春日市にVリーグのチームができてほしいなあと思っていたのでクラウドファンディングに参加したのですが、その直後にチーム名変更など体制変更になったので、これはおかしいと思って(あくまで福岡春日としてのクラファンだったので)運営に問い合わせたんですね。言い方は悪いですが、持ち逃げではないか、と。

その内容は明かしませんが、納得のいく回答をいただいた、という経緯があります。しかもやりとりさせていただいた代表の方とは共通の知り合いがいたので、これは信頼ができる方だなと(それなりに有名な方でした)。

体制を一新したKANOA福岡は、かつてトヨタ車体、そしてブレス浜松にいた熊本比奈選手が加入、その後姫路、アランマーレにいた溝口由利香選手も加入するなど、VリーガーのUターンの受け皿になっています。

Vリーグを目指すチームが各地に増えるというのは、こういう受け皿として機能するということでもあるんですよね。熊本選手は福岡県朝倉市、溝口選手は福岡市出身ですし、福岡出身のバレーボール選手って結構多いんですよ。久光だけでも岩坂選手を筆頭に長岡、栄、戸江、平山、荒木、吉武の各選手…。

今までは福岡にVリーグのチームがなかったから福岡を離れざるをえなかったわけですが、チームができれば地元にとどまれますからね(その点では福岡県に接する鳥栖に移転する久光の戦略は理にかなっています)。

KANOA福岡は熊本選手はじめ戦力も整っているので、2021年は皇后杯にも出場しましたし、2022年も全国6人制バレーボールリーグの西部決勝リーグで優勝するなど、このまま結果を出せばVリーグ加入も近づいてくると思います。

なお、2022年になってホームタウンを福智町にし、チーム名も商標の関係でカノアラウレアーズ福岡になりました(カノアもラウレアも、ハワイ語で幸福を意味しているそうです。なぜハワイ語なのかはわかりませんが)。またこれをきっかけに選手・スタッフ計3名が地域おこし協力隊に任命されました。地域おこし協力隊は、いわば政府が定めた臨時公務員制度というところでしょうか。地域密着を掲げるチームはどのスポーツでも増えていますが、地域おこし協力隊にまでなっている、というケースは私は初めて聞きましたね。

福智町は一度行きましたけど、福岡市からバスで1時間くらいです。筑豊地区の真ん中にある町という感じで、のどかな町でもあり、北九州のベッドタウンという側面もややありそう、という町です。人口2万人ですからね。

また、6月からは株式会社TRAILと株式会社TRAIL SPORTS ACADEMYがメイン&雇用スポンサーになりました。全選手、このどちらかで勤務する形だそうです(なのでそれまで働いていた企業を退社して転職したようです)。TRAILは東京に本社がある物流企業、そしてTRAIL SPORTS ACADEMYは神奈川県相模原市に本社を置く、スポーツ教室などを置く会社。つまり福岡の企業ではないんですね。

全選手雇用というけっこう大きなスポンサードなのですが、地場企業ではないところを引っ張ってきたのはすごいなと思います。

あと取り組みとして面白いのが、熊本比奈選手をインフルエンサーというか、TikTokでバズらせようとしていること。監督をいじるシリーズ動画ですが、インスタも6000人を越えましたし、地道に増やしている印象です。

TikTok - Make Your Day

体制面では本気度が伝わってきますし、アルテミス北海道同様2021年は皇后杯のファイナルラウンド出場および西部決勝リーグで優勝するなど、Vリーグ加入に向けたステップを着実に歩んでいると思います。