新チーム続々誕生。地域リーグという「受け皿」に見るVリーグの未来図

地域リーグ
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~岡山で打ち出す新機軸~
倉敷アブレイズ(岡山県倉敷市)

設立:2019年
運営:株式会社アブレイズ(母体は秀栄システムテクノ株式会社)
監督:鈴木秀生
選手:20人
公式サイト:https://kurashiki-ablaze.jp/

アブレイズは燃え立つ、や興奮する意味の英語のABLAZEから来ています。ユニフォームが赤なのもそこからでしょうね。

しかしこのチーム、何がすごいって、自前で体育館を作っちゃったんですよ。しかもチーム設立前に!詳しくは下記のサイトをご覧いただきたいのですが、にしても作ってから選手を集めるところに本気度が伺えます。普通は選手を集めてから作ると思うので。

《倉敷アブレイズ×バレーボール》真っ白なチームが歩む、Vリーグへの道。3年目のシーズンへ、躍進を誓う。【PR】 - Webタウン情報おかやま
Vリーグ参入を目標に、3年目のシーズンに挑む倉敷アブレイズ。ここまでの道のりは、決して楽なものではなかったという。結成からチーム作りまで、監督と選手たちに話を聞いた。

というのもここの監督である鈴木秀生さんは、母体の秀栄システムテクノ株式会社の代表取締役でもあるんですよね。「バレーボールをしていても、進路先にバレーボールを続けられる環境が少ない現状をどうにかしたい」という思いからチームを作ったとのことです。

https://kurashiki-ablaze.jp/team.html?id=staff

上記のサイトにも書かれていますが、岡山県には実業団のチームがないので、働きながらプレーするという手段がないことが設立のきっかけとなっているそうです。えっ、岡山シーガルズは…と思うかもしれませんが、あそこはプロチームなので、実業団ではないんですよね。

実業団ではないということは、選手生活を終えたときの受け皿となる母体の企業がないということです。岡山シーガルズの選手たちが、引退後どこかの会社を斡旋されて働けるのかどうかはわかりませんが、アブレイズは「ウチは働けるよ」ということを明確に示すことで存在感を出している気がします。

母体の秀栄システムテクノ株式会社は、倉敷市に本社を置く、一言で言えば設備工事の会社でしょうか。身近なところでは太陽光パネルの設置を行っています。

となると男性社員中心となるでしょうし、ではなんで女子バレーボール部を…と思いましたが、サイトにある募集要項を見ると、正社員となってパートナー企業に派遣される形のようです。その派遣先は事務業務、社会福祉業務、ホテル業務、接客業務などとあります(なのでちゃんと労働者派遣事業許可票もあります)。

女子バレー部員募集 | 秀栄システムテクノ株式会社 | 熱絶縁工事(保温・保冷・断熱)、スレート屋根への太陽光パネル設置工事 | 岡山、倉敷、水島エリア

親会社だけでは選手を雇いきれない(なんと20人います)からか、チーム設立をフックにして倉敷市に若い女性社員を呼び込んでいる、のかもしれませんね。地域でチームを支える。その点でKUROBEアクアフェアリーズに近いかもしれません(あそこは母体は一般社団法人ですが)。

上記サイトを見れば19時から練習とあるので、毎日練習ができるようです。そりゃ、自前の体育館があれば当然でしょうが、そう考えると福利厚生施設として体育館を作った、と言えそうです。社員の福利厚生施設として体育館を作るというのはNECの玉川アリーナもそうだったりします。あれは就業時間後に、玉川事業場の社員も使えるようになってました(バスケットボールのゴールがあるのはそのため)。

体育館がチームのサイトで紹介されていますが、なかなか立派です。

https://kurashiki-ablaze.jp/practice.html

選手が20名いますが、外国人選手もいるんですよね。共にフィリピン工科大学なので交換留学生とかそういう制度かもしれませんが。ちなみにデンソーにいる髙橋愛莉選手はここからデンソーに移籍しています。

あと、ファンクラブも2000円から5万円から5コースあるなど、ここも本格的だなと思います。

元々、岡山市と倉敷市って古くは江戸時代から対立構造(倉敷は幕府直轄の天領だったことが所以)にあったので、岡山シーガルズと倉敷アブレイズが対戦する機会があったら岡山ダービーとして盛り上がる気はします。