10年目のaiko論

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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

そして家に着くとすぐにパソコンの中にあるaikoさんの楽曲を探したけれど、その頃は毎週のようにTSUTAYAでCDを借りていたから、過去のaikoさんのシングル曲やアルバムは全て手元にあってちょっとびっくりした。そう、なんだかんだ、私はaikoさんを聞いていたのだ。

一ファンとしてaikoさんのライブに行った(つまり仕事ではなく自腹で行ったということ)のは、忘れもしない、翌2011年5月27日のLLP14、倉敷だった。なんで倉敷だったかというと、BP先行は東京にしていたので落選し、店頭で一般発売があって、しかも日程が金曜で休みが取りやすかったのが倉敷だったからだ。そこでジャンキーデビューした私は、それから2020年に渡るまで、なんだかんだと、全てのツアーにどこかしら参戦している(BP会員限定で競争率が非常に高かったLLR0を除く)。その間、仕事が変わったので前みたいに関係者としてライブは見られなくなり、ご本人と話せることはなくなってしまったけれど、それはもはや関係のない話だった。

それまでアーティストの追っかけなんかしたことはなかった私が、北は北海道、南は沖縄までaikoさんのライブを見に行くようになるとは思わなかったし、今でも不思議だ。これだけ長い間何かを追いかけ続けているのはaikoさんだけだ。一度はツアー全通をしてみよう、と思って、7公演しかないとはいえLLP15addを全て見たこともある。

いろんなライブを見てきた。喉の調子が悪い中苦しそうに歌っていたNHKも見た(翌日はaikoさん史上初の休演になった)。スピーカーが壊れていて修復の間約30分、アリーナツアーなのに即興ライブをやったガイシも見た。ステージで突然泣き出した福岡(2014年のLLP17)も見た。年内最後の歌が「舌打ち」で、まさかの「チッ」で一年を締めくくった(そんなにひどい一年だったのか 笑)初にして唯一のカウントダウンライブも見た。海外出張の翌日に時差ボケの中仙台(今やなきZepp Sendai)までLLR5を見に行った、なんてこともあった。飛行機が大嫌いなのに沖縄までLLR15を見に行った。観客の一人としてMCで声出したらaikoさんに反応されたこともある。

「恥ずかしながら戻ってきました」みたいに会場の大半を占める若者がぽかんとするネタにも大笑いした(これはaikoさんと同い年の特権だ)。いつの間にか手を挙げてイェーイと叫ぶのは「30代!」から「40代!」になったし、「老眼!」にも悲しいかな、イェーイと叫ばなきゃいけなくなった。あと、この世代別コールでも相変わらず10代20代が多いのもすごい。普通ファンはアーティストと共に年を取るのだが、これだけ若いファンを今でも増やし続けているのは本当にすごい。

aikoさんのライブで何より感じたのは、同じライブは二度とない、だった。かつての私は、アーティストのファンが2daysに両方参戦する理由がわからなかった。でも、aikoさんで気づいた。二日間ともセトリが同じライブはあるかもしれないけれど、そこに集まっているファン全員がまた集まる、ということはないのだ、と。何よりファンと共にライブを作り上げるaikoさんだからこそ気づいたことだと思う。終演後、あちこちから集まったジャンキーが散り散りになっていく光景がとても切なく感じた。そんな感情が沸き起こるようになったのは間違いなくaikoさんと出逢ったからだ。一方でライブ当日、会場周辺がツアーグッズを見につけたジャンキーであふれていて、どこかその日限りのaikoワールドが出現している光景も好きだ。

※余談だが、街を歩いていてつい街歩く人のトートバックやTシャツの柄をチェックするようになる癖がついたのも、aikoジャンキーになってからだ(笑)。

気づけばあの横浜アリーナから10年がたっていたことに気づいた。なんで私は今でもaikoさんを追いかけているのだろう。一言でいえば、ライブを見るたびに、私の中のaikoさんが常に上書きされていくから、だ。今目の前で見ているaikoさんが史上最高のaikoさん。常に進化し、常に新しい姿を見せてくれる。だから追いかける。本当に、ライブを見るたびに私の中のaikoさんがきれいに上書きされていくのだ。過去のライブを「名前を付けて保存」、ではなく、常に上書き保存。それが何より「追いかける」動機なのだと思う。あくまで私は、だけれど、でもたぶんこの感覚はaikoジャンキーならうなづいてくれると思う。

2019年10月から始まるLLR9も、いつものようにBP先行に応募した。運よく10月5日の初日が当選し、私はZepp Tokyoに向かった。元々ツアーは極力初日を申し込んでいるのだが(特にアルバムリリース後だと「この曲、みんなどんなふうに聞いてくれるんやろ」という緊張感がハンパないし、大いに盛り上げて盛大にツアーに送り出したいというのもある)、今回はどうしても参戦したい理由があった。

ここからの話はLLR9の話になります。まだ延期になったファイナルを残していますが、ファイナルはいわばLLR9.5というか、LLR9とは違った特別な意味を持つライブになると思うので、一部内容を明かします。