左胸の石井優希

久光スプリングス
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

バレーボールを長年(と言っても実質3年だが…)見ていると、自分の好きなチーム以外でも自然とその生きざまというか、選手というより人間としての成長、を垣間見られることがある。前に書いた古賀ちゃんはまさにその例だったが、気づけばもう一人いたな…今回はそんな話。

石井優希選手にいつから興味を持ったのか、は実はわからない。元々バレーボールに興味を持ったのはたまたまテレビで見た2015年のW杯だったけれど、調べたらその試合でも石井選手は出ていたのだが印象には残っていない。で、それを機に2015年のVリーグ開幕戦を東京体育館に見に行ったんだけれど、そこで行われていた開幕戦の久光対上尾も、W杯で見ていたあの長岡選手のジャンプサーブが生で見られて興奮した、という記憶はあるが、それくらいだった。ツイッターをさかのぼってみたが、石井選手について触れていたのは、その年の年末の皇后杯での東レ戦が最初だった。

どうやら石井選手に興味を持ったのは、私が初めて見に行った2017年の春高で、すっかり気に入った就実高校の出身、ということがきっかけだったようだ。ちょうどその直後に岡山大会に行っていて目の当たりにしたのが大きかったようだ。

つまり、最初はそれほど石井選手には興味はなかった。話はそれるが、この時も出ていた新鍋選手にも当時は全く興味を持ってなかった。ほんと、人の趣味趣向というのは変わるものだとつくづく思う。

17/18シーズンは私が札幌に移住した関係でほとんど見られなかったが、18/19シーズンから再び見始めるようになって、久光は新鍋選手と並行して石井選手をファインダーで追いかけることが多かった。もちろん、パワフルなアタックだったりそのプレーぶりも惹かれたが、何よりその笑顔の持つ引きの強さというか、ファンを引き付けるだけでなく運まで呼び込むような笑顔っぷりが気づけば私まで引き込んでいた、そんな気がする(その点では「SMILE BOMBER」という断幕は実にネーミングセンスがいいと思う)。

少し話はそれるけれど、昨年「しぶこスマイル」と呼ばれる引きの強い笑顔で一躍注目を集めた渋野日向子選手も、岡山出身。「晴れの国岡山」と言われているように晴れの日が多いことから、出身者には笑顔がまぶしい人が多いのかななどとも思ってしまう。推しの選手も岡山出身だし。

あと、とにかくファンへの対応が丁寧という印象だ。特に18年末の皇后杯決勝では試合後もコートに残ってファンの記念撮影に応じたりしていたし、他の選手は既に引き上げていて、いよいよコートから引き上げるかと思いきや、ファンに呼びかけられて引き返してきて、さっさと観客を引き上げさせたい場内の係員を「ああ、戻ってきちゃった…」と愕然とさせる、なんて光景も見ていた。

笑顔が絶えない、ファン思いの優しい選手。そんな印象だった。私が東レファンだというのもあるんだけれど、久光はある意味真逆というか、試合中も基本ポーカーフェイス。東レの持つ和気藹々さなど無縁のチームという印象だ(これは前任の中田監督の影響が大きかったと思う)。そんな中で石井選手だけは和気藹々さを持っている貴重な選手に見えたから注目し始めた、のかもしれない。