Vリーグ女子発展のカギを握る「北陸」という広域

KUROBEアクアフェアリーズ
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

■ダービーという対峙構造

スポーツが地元だけでなく広域で盛り上がるのに欠かせない要素が、ダービーです。隣り合ったチームが、いわば広域の覇権をかけて争う構図ですね。大阪ダービーや埼玉ダービー、千葉ダービーなど、サッカーではおなじみの構図です。

V1女子でもデンソーとトヨタ車体の愛知ダービーがあります。とはいえこの両チームは同じトヨタグループですし、刈谷と西尾は同じ愛知県かつ三河地域。両都市にそれほど地域間の対立構造もないでしょうから、ライバルという構図はまだ存在していないのかなと思います。

あと、19/20に姫路がV1に入ったことで、岡山と姫路という山陽ダービーも定番になりつつあります。ただ、19/20について惜しむらくは、この両者の対戦が佐賀、神戸、姫路であり、岡山での開催がなかったことです。また、隣県とはいえ関西の兵庫県、中国地方の岡山県と、地域自体それほどライバル関係もないのではと思います。

※むしろ兵庫に拠点のあるJT、久光、姫路で兵庫ダービーにしたほうが盛り上がりそうですが、JT、久光ともにメインホームは大阪市、鳥栖市、というのが複雑なところです。

その点、PFUとKUROBEの北陸ダービーはけっこうガチなダービーだと思います。歴史的な対立構造はないようですが(江戸時代は富山藩は加賀藩の支藩でしたし。なので対立ではなく対峙と書きました)、まず北陸地方という同一地域であること。そして何より、両県にチームのある野球、サッカー、バスケ、ハンドボール、バドミントンの各競技でもダービーが成立することです。もっともサッカーで言えば富山はJ3、そしてバスケも金沢がB3と、全ての競技でダービーが行われているわけではないのですが。

ただ、そうなるとV1でダービーがある、というのは地元メディアにとってはありがたいのかなとも思います。しかもしかも、19/20シーズンの両チームの対戦は金沢、金沢、黒部と必ずどちらかのホームでの開催だったのも大きかったと思います(というよりそうしたのかも)。しかもV1女子の開幕戦はいきなり北陸ダービーからですから、Vリーグ機構としてもそこは考えたのかなと思います。実際メディアも多く訪れたようです。

ちなみに山陽ダービーの岡山と姫路、そして北陸ダービーのPFUとKUROBEを同一カンファレンスにしたのは機構のグッドアイデアだったのではないでしょうか。

※じゃあ愛知ダービーはというと、両チームにそれほど対立の構図はないし、メディアにはあまり取り上げられないし(中日スポーツにもあまり載らない)、そもそも愛知ダービーはBリーグの方が特設サイトまで作って本格的にやっているので、という判断もあったのかも。

あと、これはそんなに触れている人は少ないのですが、サッカーでダービーの概念に触れていた私としては、ダービーの相手チームへの移籍は「禁断の移籍」と言われていて、それが19/20シーズンはKUROBEからPFUに和才選手が移籍した(しかも退団のはずが移籍希望に切り替わったということはPFUがオファーしたのでしょう)ことでそういう構図になっていましたね。これについては先ほど紹介した「リーリーリー」の動画でも触れられていますのでぜひ。

■切磋琢磨の関係性

ダービーというのはある程度力関係が拮抗しているとさらに盛り上がるのですが、両チームは共にチャレンジ4に出たり、2シーズン連続で降格争いの中でのライバルチームになっているので、強いライバル関係にあるのではと思います。

特に印象的だったのが、18/19シーズンは、シーズン0勝だったPFU相手に2勝のKUROBEがチャレンジステージでも一蹴して残留を決めたのですが(そのことはこちらに)

19/20シーズンは両者の立場が逆転、4勝のPFUに1勝のKUROBEという構図になったものの、残留をかけたチャレンジ4の直接対決ではフルセットの末去年同様KUROBEがPFUに勝ち、残留に大きく前進したという結果に。私は試合を現地で見ていないですが、「シーズンでは負けたけれどチャレンジなら去年もウチは勝っているし」という余裕がどこかありましたね。両チーム間はバチバチの関係なのかもしれません。

ただ、それが単なる対立ではなく、「ともに上に登っていこう」という切磋琢磨のライバル関係になっている印象があります。