続いて菅野監督。
16/17シーズンから監督に復帰されたわけですが、この頃の印象は「やかましい大家」という印象でした。そう、印象最悪でした(笑)。だって怒鳴ってばかりなんだもん。
ただ、菅野さんが復帰したことが木村沙織さんの現役続行の理由の一つだった、というのを知ってびっくりしたんですよね。
――リオ五輪の後、すぐに引退するのではなく「もうワンシーズン東レでやろう」と思ったのは、菅野監督だったからというのも少し影響しているんでしょうか?
「ほぼそうですね。少しじゃないです。菅野さんだったから、『やろう』と思いました」
引用元:木村沙織が6人全員を振り返る「私を育てた女子バレー界の監督たち」(Sportiva)
あれだけ厳しい監督だけれど選手たちは慕っているんだ…と。
実際に菅野監督への印象が変わっていったのはいつからだったかな…でも、2018年の黒鷲旗に行ったときにばったり廊下で出くわしたんですけれど、とてもやさしい顔をされていたのでそこからだったかな。でも、18/19シーズンからまた東レを見出しても、最初はそんなに…という感じでした。とにかくあのシーズンは日立の角田監督に夢中になっていたので(笑)。
ただ、何より大きかったのが、それまで私の中で(撮ることに夢中にならないという自戒の意味で)NGにしていたベンチ裏シートに座る、ということを始めてからかなと。テクニカルタイムアウトや試合中での菅野さんの指示が…監督というよりは指揮官という感じでしたね。角田監督は私の中ではいわゆるモチベーター、なわけです。でも、菅野監督は試合中にアナリストなどから集まってくるデータを元に選手たちに指示を与える。データだけあってもダメで、それをどう戦術に落とし込むか。でも落とし込むだけでもダメでどう選手たちの「頭の中にインプット」するか。それがうまかった。
試合中に突然大声出すこともあるのですが、それはメリハリというか「ここだここだ」という意味もありますし、試合中にも普通に「レフトないぞレフト」とか具体的に指示を飛ばしてました。
それからもう、「頼れる指揮官」という感じになりましたね、私の中では。だって実績だって豊富なわけですし。菅野さんの言うことなら間違いないだろう、みたいな。実際それで18/19シーズンはファイナル8を勝ち上がっていきましたからね。これはあくまで私の印象なのですが、第一セットを取られてもそこで集まったデータを元に立て直してひっくり返す、という試合がよくあったんですよね。菅野マジックとでも申しましょうか。
そんな菅野監督で一番印象に残っているエピソードが。昨シーズンの仙台でのファイナル8、JT戦でのこと。選手名は明かしませんが、ある選手がベンチに下がったときに「なんであそこでああいうプレーをしたんだ」と試合中に説教を始めたんですよね。で、その選手が答えられないでいると「もういい、下がってろ」と言ってそこから試合に出させてもらえなかった、ということがありました。そこに菅野監督の厳しさが表れてましたね(その選手は試合後めっちゃ凹んでましたが、次の試合はちゃんと出ていてホッとしました)。
あとこのシーンなのですが、得点で盛り上がる中でちゃんと関選手に大声で声かけているんですよね。
木村沙織さんがいなくなって選手が一気に若返って、それでいわば学校の先生みたいに熱血指導、に切り替わっていったのかなあと思います。テクニカルタイムアウトでも「こっからやぞ」とか、とにかく引き締めることを多く発していましたし、何より印象的だったのが、今シーズンのファイナル8のデンソー戦(結果的に今シーズンの東レの最後の試合)でのテクニカルタイムアウトの「一人でやってるんじゃないんだ、みんなでやっているんだ」という言葉。これが菅野監督の本質なんじゃないかな…
もう来季は館内に響き渡る怒声も聞けないと思うと淋しいな(笑)。ベンチ裏で見ていると、菅野さんの選手への檄が、まるで私まで怒られているかのようだった(つい「すみません…」と言いそうになるという 笑)、というのも今となっては懐かしいです。あと、何回も言いますが、けっこう私に似ています(こんなにおっかなくないけど 笑)。