やっぱり世界には黒後愛しかない

東レアローズ滋賀
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2020年5月14日。当時は緊急事態宣言の真っただ中で、黒鷲旗も中止になったり今後の大会の見通しが立たないなど、私は鬱屈した日々を送っていた。

そんな中で発表された東レアローズからのリリース。その中にあるこの文章に鳥肌が立った。

「また新キャプテンを黒後愛選手、副キャプテンを白井美沙紀選手と中田紫乃選手とし、新たな体制でチーム強化を進めて参ります。」

引用元:2020-21シーズン新体制、スローガンについて」東レアローズ女子公式サイトより

黒後選手がキャプテンだと!

個人的には、次のキャプテンは白井選手だと思っていたし、彼女の次にもしかしたら小川選手になるのではと思っていたくらいだったので、数年先と思っていた未来がグイッと引き寄せられた、そんな感覚だった。

※そのとき感じたことはこちらに書いていますので宜しければご覧ください。

黒後選手がキャプテンということは、私が大好きな試合前に走って入場するシーンも先頭は黒後選手だし、入場の時も先頭…その光景を想像するだけで、楽しみが一気に広がった。この日から開幕戦へのカウントダウンが始まっていた。今思えば、リーグ戦が無事開幕できるのか、すらわからない当時の状況の中で、キャプテンという衣をまとった黒後選手を見たい、というのは強烈なモチベーションかつ、救いになっていたと思う。

ちなみにキャプテンにしようと決めたのは就任したばかりの越谷監督だったという。その理由についてこう語っている。

チームにとっても非常に重要なキープレーヤーだと思うので、本人に自覚を持たせようと思いました。今までは自分のプレーのことしか考えていなかったかもしれませんが、よりチームがどうなるかということを考えていくことによって自然と行動が変わるのではないかと思ったので。

引用元:バレーボールマガジン(2020.11.23)

これはDAZNでの矢田部さんの実況から、だが、黒後選手をキャプテンに、というのは5月に決めて本人に打診したという。発表が5月14日だったことを考えると、短期間の間に一気に決まったのだろう。そもそもスローガン含めた新体制をこの時期に発表するのも異例だった。東レはここ5年は6月に発表していたし、他チームでもこの時期に新体制とスローガンを発表したところはなかった。

今にして思えば、開幕からリーグ戦未だ無敗という今季の東レの好調さの要因はここにもあったのかなとも思っている。すでにこの時点から突っ走っていたというか。「行けるところまで行こう!」という気持ちがこの時からあったのかも思う(確かにヤナ選手も帰国できず、5月の時点で既にいつ開幕しても大丈夫な状態になっていたのだが)。

さて。

開幕戦で、試合前に先頭で走って入ってくるキャプテン・黒後選手を撮るのを最大の目標においていた私だったが、開幕戦と翌週の試合がリモートマッチになったため、その姿が観客の前で初めて披露されたのは開幕から2週間後の10月31日、姫路でのNEC戦だった。チケットを買うときはどこから入ってくるのかわからなかったので正面からは撮れなかったが、これが初めて一般の目に触れたキャプテン・黒後選手の姿だ。