風の谷の東レアローズ20/21ファイナル

東レアローズ滋賀
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

2021年2月21日。ファイナルの舞台に立てる。それは今まで以上にかけがえのないシーズンとなった。

昨年の5月頃、私たちは「お客さんを入れて」「リーグ戦が開催される」ことを想像すらできなかった。日々悪化する状況。先行きが全く見えなかった。好転する材料が全くなかった。大会は続々と中止になった。何か、明るい未来が見えるものはないのか…

そんな時に飛び込んできたのが、5月14日の東レアローズからのリリースだった。いつもは5月末や6月に入ってから退団選手を発表し、6月に新体制&スローガンを発表していたのだが、5月中旬という早いタイミングに、まとめて一気に発表したのだ。

ああ、なんか一気に未来が見えた感じだった。特にリリースにあった「キャプテン・黒後愛」にはしびれた。私の好きな、ウォーミングアップでコートに入ってくるシーンの先頭が黒後選手になるのか!とか、いろんな光景が頭の中に広がった。プレーでファンをしびれさせることはあるだろうが、リリースという文章だけでしびれさせてくれるなんてそうあることじゃない。

私はこのことを急遽開催したインスタライブで話したんだけど、聞いてくれた女の子たちからの反響が大きくて、急遽ブログを書いた。思いは他の人たちも一緒だった。

月日は流れ、開幕が迫ってきた。はたしてリーグ戦は開催できるのか。そして有観客でできるのか。どんな形式になるのか、なにがOKでなにがNGになるのか…そしてもし感染が拡大してそれどころじゃなくなったら、打ち切りになったらどうしよう…。私たちには不安しかなかった。

でも。私たちは少し忘れていたかもしれないけれど、不安しかなかったのは選手たちも同じだった。でも、不安にさいなまれているだけでは何も始まらない。

「何が起こるかわからないんだったら、行けるところまで行くぞ!」

今季の東レアローズは全て、この言葉に集約されていた。

元々東レは恵まれていた。他チームは所属外国人選手はおろか、新外国人選手の獲得すらままならない中、東レはヤナが帰国できずにずっと日本に残らざるを得なくなったことで、いつでも開幕OKな状態になっていた。しかも退団二名、新加入一名とこちらも最小限で、チームの構築に時間がかからなかった。埼玉上尾に至っては監督すら来日できなかったわけで、東レは開幕前から圧倒的に有利だった。

だったら有利なうちに行けるところまで行くぞ!

そう思うのは当然だった。